遅い春が来て、動き始めた季節は何を見せてくれるのだろう

暑い夏の空の下、廃線となった線路の上を一人旅する少年、謙人(けんと)。あてもない旅。目的を探すのが目的の旅。

そんな彼が出会う、自身を魔女だと、ありすだと名乗る少女、有子と言葉を喋る黒猫、ミーシャ。
彼女の願いで、村の祭り『春渡し』に参加することになる……

底抜けに明るくちょっぴり天然な有子に、基本冷静に答える謙人、皮肉屋だけど優しい黒猫ミーシャが繰り広げる会話がテンポよく面白いのですが、ここに個性豊かな村人や有子の両親が加わるとその面白さは加速します。

なのにどこか幻想的で、不思議な空気を感じさせられます。読み進めていくと、明るく楽しいからこそ、時折感じる小さな違和感、疑問が頭の隅に居座っていきます。でもその違和感は悪意とか嫌なものではなく、すごく優しいものじゃないかなと、私は思っています。

現時点で物語は進行中ですが、謙人の旅の目的、そして有子や村人たちが時々見せる寂しさ。それらを全て知ったとき何が待っているのか、不安と希望いっぱいで読んでいます。

是非とも一度読んで欲しい、お薦めの作品です。

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