喋る黒猫とうそつきの麦わら

作者 香澄 翔

春と夏の間に起きた、不思議で愛おしい出来事

  • ★★★ Excellent!!!

平穏とワクワクが同居する田舎の空気、可愛らしいキャラクターたち、散りばめられた意味深な謎が紡ぎ出す、温かくも切ないストーリー。万人受けの作品だと思います。

主人公の謙人は、廃線となった線路を辿っていくだけの旅をしている途中、麦わら帽子に眼鏡をかけた三編みの少女、有子と出会う。魔法が使えるという彼女は、喋る奇妙な黒猫を引き連れていた。そんな不思議な少女と猫、一人と一匹に出会った謙人は、とある村で行われる「春渡り」なる祭りに参加することとなる。

可愛らしいキャラたちの、ほのぼのとした掛け合いと、懐かしい田舎の空気が織り成す空気に浸りながら、しかし上手く仄めかされる謎をどんどん追ってしまいます。そうしてたどり着いた終盤にて明かされる真実は、ひどく胸を締め付けるものですが――どこまでも温かい優しさと切なさ、有子と謙人が歩む道の眩しさが、こちらの心を癒やしてくれます。

大事に抱えていたいものが詰め込まれた宝箱のようであり、甘酸っぱさと苦さが凝縮された柑橘のようでもある物語。ぜひご堪能ください!

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