彼女を介護する際には絶対に破ってはいけないルールがある……

看護師から介護サービスの仕事に転職した栗谷茜。当初は訪問介護の仕事だと思われていたが、妙にアットホームな雰囲気を出す会社から言い渡された仕事内容は、住み込みでの介護だった。

勤務先となるのは携帯の電波も届かない山奥にある洋館。そこの主人である宮園妃倭子という女性を介護することになるのだが、彼女の介護をする際には絶対に守らなければいけない奇妙なルールがあった。それは……彼女の顔を絶対に見てはならないこと……。

顔を見せてはならないということで妃倭子は黒い袋を被せられており、こちらの言葉には一切反応せず、さらに食事は漏斗を使って口の中に生肉のミンチを流し込む……。明らかに異常な光景なのだが、この状況を当たり前のように受け入れているヘルパーたちも明らかにどうかしているし、さらに何やら秘密を隠している。当然茜の不安は募るばかりなのだが、屋敷の中では徐々に異変が起き始め……。

本作の素晴らしい点は、屋敷の主人の病状や彼女への介護の様子など、ひとつひとつの描写がとてもきめ細かいこと。描写の説得力が全体のリアリティの強度を高め、読んでいていろいろな意味で気分が悪くなってしまう。しかしそれでも先が気になって続きが読みたくなるからますますたちが悪い。
万人にオススメできる作品とは決して言えない。でも、こういうホラーが大好きな人、いるでしょう?


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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