小さな世界の名探偵

一読して「すでに書籍化されている作品なのかな?」と思ったほど完成度が高かったです。

スクールカーストが支配する、公立中学校という狭く閉じられた世界。そこで巻き起こる大小さまざまな事件を木下幸太郎と峰岡沙雪の二人の生徒が解決するお話です。
理路整然としたスマートな推理は爽快ですし、本作の探偵役でありヒロインの峰岡さんの完璧清楚美人っぷりは最高です。そしてなにより、本作の主人公で、ひねくれたスクールカースト最下層の木下くんが時折毒づく、スクールカーストやその他の理不尽な学校教育制度へ怨念の籠った指摘がクセになります。
ここまで書くと、なんだかかなり尖った小説にも思えますが、謎を解きながら同じ学舎でたくさんの時を共に過ごす級友の知らない面が見えてきたり、また謎解きの後に自分の価値観や世界の見え方が変わるという王道学園ミステリーとしてかなり完成度が高く、万人が面白いと思える小説となっています。そのあたりのバランスやキャッチーさ、構成の巧みさとかがプロっぽくて書籍化した小説のカクヨム版なのかな、と思ったほどでした。
このボリュームでも一気読みできてしまうほど読みやすいです。本作の続編的立ち位置の短篇『犯人はヤスじゃない』もとても面白かったので、合わせてお読みいただくことをおすすめします。

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