あらすじから期待されるものそのままな青春ミステリ


(第1部第5話時点でのレビューです。作中では各話ごとのちょっとしたミステリ要素とは別に第1部を通してメインとなりそうな事件が現在進行形で扱われています)

スクールカースト最底辺を自称する主人公と、カーストの外に生きていそうなヒロインによる、日常の謎風味の青春ミステリです。各話ごとにおおよそ独立したミステリ要素が登場しますが、話はつながっており、連作短編集というより長編としての趣が強いです。
主人公によるスクールカーストに絡めた自虐や愚痴といった鬱屈語りが随所に出てきますが、基本的にはエッセンス程度で主題ではなく(もしかしたら今後テーマ的に回収されるかも?)、ライトな読み口の青春ミステリとして楽しむことができます。

登場する謎は『消えた忘れ物の意外な場所からの出現』『ヒロインはいかにして主人公の窃視(?)に気づいたか』など、真相自体の衝撃も含め日常の謎ジャンルとしてもささやかなきらいのあるものですが、しっかりと別解を潰しつつ手がかりと伏線をもって論理的に解答を導出しようとする姿勢は徹底されており、そういった類のミステリを好む方ならば好意的な気持ちを抱ける仕上がりになっていると思います。
一方で第1部のメインとなりそうな事件は相応の重みをもつもので、じっくりと丁寧な捜査が描かれ、ある種の青春ミステリにみられる「痛み」を予感させる展開となっています。この先に待つ真相とその決着如何によっては、はっきりとした一本の筋を持つ長編としての魅力も備えた作品になってくれるのではないかと期待できそうです。


あとヒロインがかわいい(重要) 頭が良くて小っちゃめで優しくて敬語な美少女がゴリゴリの謎解きしてくれたらそれだけで嬉しくないです? 私は嬉しかったからそのまま全部読んだ。