一読して「すでに書籍化されている作品なのかな?」と思ったほど完成度が高かったです。
スクールカーストが支配する、公立中学校という狭く閉じられた世界。そこで巻き起こる大小さまざまな事件を木下幸太郎と峰岡沙雪の二人の生徒が解決するお話です。
理路整然としたスマートな推理は爽快ですし、本作の探偵役でありヒロインの峰岡さんの完璧清楚美人っぷりは最高です。そしてなにより、本作の主人公で、ひねくれたスクールカースト最下層の木下くんが時折毒づく、スクールカーストやその他の理不尽な学校教育制度へ怨念の籠った指摘がクセになります。
ここまで書くと、なんだかかなり尖った小説にも思えますが、謎を解きながら同じ学舎でたくさんの時を共に過ごす級友の知らない面が見えてきたり、また謎解きの後に自分の価値観や世界の見え方が変わるという王道学園ミステリーとしてかなり完成度が高く、万人が面白いと思える小説となっています。そのあたりのバランスやキャッチーさ、構成の巧みさとかがプロっぽくて書籍化した小説のカクヨム版なのかな、と思ったほどでした。
このボリュームでも一気読みできてしまうほど読みやすいです。本作の続編的立ち位置の短篇『犯人はヤスじゃない』もとても面白かったので、合わせてお読みいただくことをおすすめします。
(第1部第5話時点でのレビューです。作中では各話ごとのちょっとしたミステリ要素とは別に第1部を通してメインとなりそうな事件が現在進行形で扱われています)
スクールカースト最底辺を自称する主人公と、カーストの外に生きていそうなヒロインによる、日常の謎風味の青春ミステリです。各話ごとにおおよそ独立したミステリ要素が登場しますが、話はつながっており、連作短編集というより長編としての趣が強いです。
主人公によるスクールカーストに絡めた自虐や愚痴といった鬱屈語りが随所に出てきますが、基本的にはエッセンス程度で主題ではなく(もしかしたら今後テーマ的に回収されるかも?)、ライトな読み口の青春ミステリとして楽しむことができます。
登場する謎は『消えた忘れ物の意外な場所からの出現』『ヒロインはいかにして主人公の窃視(?)に気づいたか』など、真相自体の衝撃も含め日常の謎ジャンルとしてもささやかなきらいのあるものですが、しっかりと別解を潰しつつ手がかりと伏線をもって論理的に解答を導出しようとする姿勢は徹底されており、そういった類のミステリを好む方ならば好意的な気持ちを抱ける仕上がりになっていると思います。
一方で第1部のメインとなりそうな事件は相応の重みをもつもので、じっくりと丁寧な捜査が描かれ、ある種の青春ミステリにみられる「痛み」を予感させる展開となっています。この先に待つ真相とその決着如何によっては、はっきりとした一本の筋を持つ長編としての魅力も備えた作品になってくれるのではないかと期待できそうです。
あとヒロインがかわいい(重要) 頭が良くて小っちゃめで優しくて敬語な美少女がゴリゴリの謎解きしてくれたらそれだけで嬉しくないです? 私は嬉しかったからそのまま全部読んだ。