硝子の仮面と鉄の杖 

作者 サトヒロ

189

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★★★ Excellent!!!

突然、ボロアパート住まいの主人公が、仮面を被った男に襲われるところから物語が始まります。
そして、その主人公を助ける白い仮面を被った謎の女。

冒頭から、一気に読者をミステリアスな世界へと引き摺り込みます。

また発達障害の主人公というのも珍しく、難しい主人公の心情描写と、彼を取りまく情景描写を、読みやすい文章で綴る作者の腕は大したものです。

札幌を舞台にした、このミステリアスな出来事の顛末は、ぜひその目でお確かめください。

★★★ Excellent!!!

謎を追うサスペンスフルな展開と、その豊饒な味わいが堪能できる良作です。

北海道のファミレスで皿洗いバイトをする児童養護施設を出た発達障害の青年・尚人は、ある雪の降る夜に悪霊に取り憑かれた男に襲われる。そこをミステリアスな女性に助けられ、彼の人生は一変する。彼を助けた女性・絵莉は、巨大企業の会長の秘書だと言う。また、その会長とは青年の祖母であるらしい。彼女から被ると幸せになれるという不思議な仮面を授けられた尚人は、巨大企業の御曹司として東京へと連れて行かれる事になる――。
東京に連れて行かれた尚人はそこで大企業による手厚い教育を受け、そして莫大な時間と富と権力を得て、洗練された男性へと変貌を遂げる。また彼はその地で、それに絡む一族の興した企業の隠された過去と黒魔術のような言い伝えを探ることとなる。それらを辿るなかで、絵莉や尚人自身の過去をもが徐々に明かされていく。

コンセプトを盛りすぎると並の書き手ならしっちゃかめっちゃかになって破綻してしまうでしょう。しかし本作は調和のとれた一作の長篇として見事に成立しています。そうさせている作者の技量にはまず驚嘆いたします。
それは過去作から登場人物や舞台をリユースしているからかもしれません。特に主人公の尚人と絵莉は書きやすそうだなと読んでいて感じました。また語彙力豊富なスタティックでハードボイルドな文体も本作を大きくを盛り上げてくれています。加えてタイムリミットが設定されていることや、正体の掴めない敵からミッションの妨害を受けたり命を狙われるという点で、サスペンス要素も強調されているようです。

本作の構成要素である”劣等感を抱える主人公の隠された血統と華麗なる転身”や”魔術的なファンタジー要素”、あるいは冒頭のシーンに見られるような悪霊とのバトルシーンなどはライトノベルを構成する要素としてもド定番です。しかし(これは実際に読み進… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

サスペンス感溢れる、重厚なホラーミステリーです。

不遇な人生を送っていた主人公の元に運命の人が訪れ、陰謀が渦巻く世界に放り込まれてしまいます。富豪である祖母の言いつけに従い、失踪者を追うため北海道を訪れますが…。

タイトルからダークファンタジーなどを連想しますが、徹底したリアリズムで物語が進行していきます。

緻密な描写や北海道を主な舞台に謎を追い求めて駆け巡る展開は『羊をめぐる冒険』を彷彿としました。

手に汗握る展開も待ち受けている極上のサスペンス。濃密な読書体験を、是非!

★★★ Excellent!!!


不運な人生を歩んできた主人公ですが、ある日を境に、陰謀渦巻く世界に巻き込まれていきます。

仮面。
富豪。
過去の事件。
脅迫。
殺人。

ミステリーの要素がたくさん詰まった中に、ホラーテイストが散りばめられていて、読者の心をすっかり不安に陥れます。
ストーリー展開も早く、過去から現在への繋がりがどういう結末になるのか!?
最後の最後まで目が離せないでしょう。

★★★ Excellent!!!

アルバイトで生計を立てる青年・尚人のもとに、運命の使者が現れる。
その女・絵莉に連れられた先に待っていたのは、富豪の祖母との邂逅だった。

祖母に告げられ、自分の両親の謎を捜して。
尚人と絵莉は、バイクで両親所縁の地を駆け抜ける!

ファンタジー要素とミステリー要素が濃厚に絡み合い、格調ある、薄暗い画面の邦画のような雰囲気を生み出しています。
尚人が与えられた「仮面」や、各地に残る様々な手がかり。
ひとつひとつが意味を持って現れ、次なる謎へと誘います。

ずっしりとした読み応えの、骨太なミステリー。
分厚い本を読んでいるような、邦画を鑑賞するような感覚で、どうかじっくりとご堪能下さい。