政府によって幽霊が法的に定義され、それゆえに幽霊の存在を認めない国家というあらすじからして非常に興味深いです。その国の末端ともいえる役所の窓口職員が世界の実情と国の見解とのギャップのなかで苦心するコミカルさがあり、もう一方では幽霊の恐ろしさがあり、それが黒い絵の具と他の色の絵の具を混ぜ合わせた時のように次第にコミカルな読み応えが全面的に支配してくるようになった時にはこの小説の面白さに浸っていました。
突飛な世界ではありますが、その中でも精緻なディテールを保持し、妙に共感性の高い社会生活の描写が読者を物語世界に引き込んで離しません。脱力感のあるオチまで必読です。窓口職員が悪夢のような外見をした幽霊を撃退するべく唱えた最終手段の呪文とはいったい——?
SFとレトリック、そしてアイロニカルなユーモア。ここでしか読めない世界をご堪能ください。