第45話 嫌われるニーナ3
「こんにちは。久しぶりね。今院長はいないのかしら?」
「院長は毎日出掛けてていないの。」
「毎日?あなた達を放っておいて?」
何をしに行ってるのかしら。
「他にも大人はいるから大丈夫なんだけど…」
「けど?」
「ジョセフィーヌ!何をしてるの!勝手に外に出ては駄目でしょう!」
出てきたのはボッテリとしたオバサン。
とても皆と同じものを食べてるようには見えないわ。
ここで毎日住み込みで働いてるわけじゃないなら、家で美味しいものを食べてるって事だし、それは問題ではないけど。
けど、外に出たら駄目って何故かしら?小さな子供でもないし、敷地内なのにそんなに怒らなくてもいいよね。
ここには文字も書けない子がいるって言ってたけど、教師じゃなくてもそれくらい教える事はできるはずよ。勉強を教えたりはしないの?
ちょっと潜入してみたいわ。
「すみません。『ボナース院に行くように』…と遣いに出されたのですが、門前払いでしょうか?」
「誰に頼まれたんだい?」
「ラドクリフ伯爵からです。」
「そんなの聞いてないね。」
「それはそうでしょう。貴女達が知らなくても、伯爵は用事があれば遣いをよこすわ。」
う~ん、さすがに信じてくれない?
そうだよね、伯爵の名前を出せば入れてもらえるなら、犯罪者だって入れちゃう訳だし。
もしかして院に入るのには手形みたいなのが必要なのかも。そんなのわからないし、何とか押し進めるしかないよね。
「『入れていただけなかった』…とお伝えします。客人に対する院の対応は
ジョセフィーヌは今日もヨレヨレの服を着て、肌もカサカサ、顔色もあまり良くない。これが彼女だけ…なら、もっと大変な事よね。確かめないと!
「…わかったわ。ついてきなさい。」
言われなくても行きます!
「ありがとうございます。」
院の中は清潔にしてあるとは言えないわ…。棚も誇りがかぶっている所があるし、服は洗濯していない物があちこちにある。15人いるのだから、仕方ないといえばそうだけど。けれどこんな状況を日常化するのはよくないよね。
人数が多いから汚れるけど、その分掃除する手だって多いんだから。
「ぃたっ!」
キョロキョロしていると、また泥団子が投げられた。
それを見てても大人が何も言わないってどうなの?こんなの無法地帯になって当然じゃない。
誰か駄目だと言ってくれる大人はいないのかしら…。
「あの、ここには大人は貴女しかいないのですか?」
「いませんね。」
この人、この子達の事を心配したりはしていないよね…見た様子では…。
「………っ
またしても泥団子…私もどこかで作って投げたいわ…。投球なら得意よ!
はぁ…私すっごく嫌われてるよね…。
けど見たところジョセフィーヌだけが特別着古した服を着せられているようではないし、それは安心した。
…私はどろどろだけど。
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