第67話 大ピンチのニーナ1

そんなに時間はかけてられない!!

誰かに伝えに行かなきゃっ!


私はもと来た道を引き返した。曲がり角から2つ手前の部屋の扉が開いた。

出てきたのは身なりの綺麗な男の人。


「あのっ!ここで女の人が…」


開いたままの扉から、縛られた女の人と手に縄をもった男が見えた。

「っ!?」

この人が犯人っ!?


「まてっっ!!」

「キャッ!」

急いですり抜けようとしたけど、焦った男に腕を掴まれて私も部屋に連れ込まれた。


「離してっ!!一体何なのよ貴方達!こんな事をしていいと思ってるのっ!!」


完全に油断してたわっ!相手が部屋から出てくるなんて予想してなかったもの!

クール様にあんなに教わっていたのに。

『油断大敵!!』


……横を見れば手首を縛られたシャロンに似ている人がいる。


もしかしてこの子…間違えられた?


「一体何が目的?」


「この舞踏会の間、殿下に虫がつかないように…と、あるお方から頼まれてね。」


あるお方?さっきの侯爵とか?


「…もしかして貴方達、殿下が会場に来る前からここにいたの…?」


「その通り。」


…ここをシャロンが通るかどうかもわからないのに?

もし会場にいたとしても、エドワードの隣に…彼女にとって最高のポジションにいるのに、こんな所に来るわけがないじゃない…。


「…ねぇ貴方達、もしかしてシャロンが来てると思ってたの?」


「どういう事だ?」


「今日はシャロンは招待されていないわ。この女性は別人よ。」


「嘘をつこうとしても無駄だ。」


つくわけないでしょ…。


「だったら、エドワード殿下に聞いてみるといいのではないかしら。」


「うるさいっ!お前はシャロンじゃない、どうなっても構わないんだからな…。偉そうな口を利かない方がいいぞ。」


「……」


これで何かあれば全てエドワードのせいよ!


・・・・


「エドワード殿下、申し訳ありません。まだスミス様は見つかっておりません…!」


俺とクリフが会場に戻ると、警備隊長が急いで報告に来た。


「何の話だ?」

「『スミス様がいないので直ぐに探せ』と命令したのではないのですか?」

「どういう事だ…?」

「テイラー様が焦った様子で『ニナ様を探せ、殿下の命令だ』と…」

「いないのか!?」

「そのようです。今私達も探して入るのですが…」

「っくそ!」


「っ殿下!!待ってくださいっ!」


クリフが止めるのを振り切って、クールが向かっていったという方向に俺も走った。


ただ単に、外の空気を吸いに行っている…とか、俺から逃げている…という可能性だってある。いや、何かある可能性の方が少ない。


だがクールのような、何があっても冷静な男が焦っているという事は、本当に何があったという事だ…


やり過ぎた…。

あまりにも目を引きすぎた。

ニーナだと確認する為だとしても、この会場ではダンスをするだけでもよかった。なのに何故か少しからかいたくなってしまった。子供でもないのに馬鹿な事をしてしまった。


俺はまた彼女を危険にさらしたかもしれない…。

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