第69話 大ピンチのニーナ3

 舞踏会が終わって、私は呼び出された。

部屋にはエドワードとクリフと私の3人…クール様はいないのよね。


「君はニーナだね。」

「私はニナです。」


焦らないでいつも通りの私でいなきゃ駄目!簡単に捕まってたまるもんですか!


「…クールとはどんな関係?えらく仲が良さそうだったけど。」

「私が誰と仲良くしていたとしても、それを殿下に教える必要は無いかと思いますが。」

「それもそうだ。」


もしかして、意外とあっさりひいてくれる?


「君はどうすれば俺のもとにもどってくる?」


…俺のもと…ですって…?


「私は殿下のもとにいた事は1度もないと思いますが、どなたかとお間違えでは?」

「でも『婚約者』だからね、俺のもと…であながち間違いではないよ。」


婚約者を放っておいて、あながち…。よく言えたわね。


「先ほど『婚約者の話など嘘だ』と仰っていたではありませんか。」


どんどん情報をあかしてくるようになったって事は、それだけ私がニーナだとわかる何かがあるという事?

ううん、絶対にないよね。


「そうだな。では別の話をする。さっきの2人組だが、やはりシャロンを狙っていたそうだ。その2つ隣の部屋にニーナを狙ってた男がいた。」


私はよ!


「……」

「侯爵の手の者だ。」


やっばり狙われてたのね…。

そりゃそうよね。

シャロンを捕まえるのが目的の男に私が捕まるなんて、クール様の判断材料に全くならないもの。


「もう何かしてくる事はないだろうけど…気を付けるに越したことはない。」

「ええ、そういたします。お話がこれだけでしたら帰らせて頂けないでしょうか。精神的にもくたくたですので…。」

「次は会う約束をしてくれるなら帰すよ。」

「約束…」


しなかったらどうなるの…?このまま閉じ込められる…かもしれない。それだけは絶対に嫌っ!


「ええ、約束致します。」

「そう、嬉しいよ。」


全然嬉しい顔してないよね。いつもの胡散臭い笑顔じゃない。


「日は追って連絡する。」

「はい。楽しみにしております。」


そんな日は永遠に来なくていいけどね!


帰るにしても、馬車で伯爵邸まで送られるよね。

伯爵に『エドワードの婚約者』だと知られる前に逃げないと…知られてから逃げ出せば、伯爵はどうなるかわからないもの。


逃げるなら今日、帰る道のりで。


でももし人をまけたとして…私はどこへ行けばいいかしら?ステーシーとクール様は仲がいい…ってエドワードならもう知ってると思うのよね。だから、お店に逃げ込んでもすぐに捕まえられるわ。


私が行った事のある場所で、寝泊まりできそうな場所…


ボナース院っ!!


子供達に物凄く嫌われてるけれど、身寄りのない私を日暮れの街に放り出したりはしないでしょう。院長がエドワードのような最低な人でなければ!

きっとボナースに私がいるわけがない…って思うはずよ。

エドワードやクリフが私を伯爵令嬢だと考えているのだから尚更よ。

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