第13話 オマケⅡ

 エミリーに待望の女の子が生まれた。


 可愛い、男は既に二人いて、嫡男はスタンレー侯爵家を継ぐ跡取り、次男はブラウン伯爵家を継ぐ事に決まっている。


 「はぁ~」

 「おい、仕事中にデレデレと引き締まらない顔を見せるな!気が散る」

 「すみません。宰相閣下」

 「その呼び方もよせ!喉元が痒くなるからな」

 「分かりました。オーガスト様」

 「うむ、昔からそう呼ばれているからその方がしっくりくる。で、今日はなんだ!」

 「いえ子供の事を考えていました」

 「ああ、女の子が生まれたらしいな」

 「はい、妻に似て可愛いんです」

 「へぇー、じゃあ俺の所に貰おうか」

 「はっ?どうしてですか?あげませんよ。何言ってるんですか」

 「俺の息子の嫁に貰う」

 「だから、ダメです!嫁には出しません」

 「お前、今からそんなんじゃ、本当に嫁に行くときは大変だな」

 「だから、嫁にやらないって言ってるでしょう」

 「知らないのか?今、お前の娘を高位貴族らが取り合っているのを。その内、王家からも打診がいくぞ。兄上も女伯爵の娘を王太子妃に欲しいって言っていたぞ」

 「はっ!陛下がですか?」

 「そりゃあ、行くだろう。淑女として名高い夫人の娘だから、間違いなく王太子妃になれるだろう。何せ彼女が育てるんだから間違いなく、立派な淑女になるはずだ」

 「そうかもしれませんが、王家には……」

 「だから、俺の息子の嫁にすればいいだろう」

 「そんなに早く決めなくてもいいんじゃないですか。まだ生まれて間もないのに…」

 「お前なあ。優秀な令嬢を早くから確保するのは当たり前の事なんだよ。家長としての務めだ。それにアマリリスも夫人と仲がいいから、嫁姑問題は良好な関係が築ける。安心して嫁がせろ」

 「それは決定事項なんですね」


 がっくり項垂れるアルフレッドは、ごり押しの強いオーガストの言葉を帰ってエミリーに伝えると


 「まあ、アマリリス様がお姑様でしたら、この子も安心ですわ。それにまだ先の事ですから、今からたっぷりと愛情を注いであげればいいではないですか」

 「そうだな、今から考えても仕方がない。大切に育てて行こう。愛しているよエミリー」

 「ふふ、私もです。愛しています。アル様。貴女が姉の婚約者だった頃からずっと好きでした。初恋の貴方の妻になれて幸せです」

 「えっ、そんな前から好きでいてくれたのか。全然気が付かなかった」


 アルフレッドは少し困惑しながら苦笑いをしていた。


 その様子にエミリーは


 ---姉の婚約者に密かに想いを寄せて、結婚までした私は、あの噂の様に『悪女』なのかもしれません。


  こっそりそう考えていた。

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姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています 春野オカリナ @tubakihime

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