第2話 姉と妹
子供の頃から明るく人を魅了する母親似の美しい姉と、平凡な容姿のエミリーはよく比較されていた。
エミリーの夫であるアルフレッドは、元々エリザベスの婚約者だった。彼の両親が事故で急死した為、祖父であるスタンレー伯爵家に引き取られた。
エミリーと姉は平民の父と伯爵令嬢だった母が駆け落ちして生まれた子供。
父が亡くなり路頭に迷い、母は既に実家の伯爵家を勘当されていた為、伯母を頼るしか手立てがなかった。その数年後に母は父の元へ旅立った。まだ幼い姉妹を残して。
大伯母は伯爵夫人で、とても礼儀に厳しい人だった。夫を戦争で早くに亡くし、子供も親類もいない中、一人で領地を治めている女傑。
いずれ二人の内、どちらかを養女として伯爵家を継がせる考えだった。
ある日、スタンレー侯爵が時節の挨拶に来て、エリザベスに一目惚れしたアルフレッドが侯爵に頼み込んで二人は婚約する事になる。
スタンレー侯爵には昔、二人の祖母と恋人同士だったのだが、伯爵家は当時借金が膨れあがり、その返済の為に政略結婚せざるをえなかった。泣く泣く別れた恋人の子供といずれ結婚させたいと願っていたが、彼女の娘は平民と駆け落ちした。だから孫同士という事になった。
初顔合わせは、スタンレー侯爵家で行われ、エミリーは何れ義兄となるアルフレッドに挨拶する為に一緒に訪問した。
初めて会ったアルフレッドは、快活な黒髪の少年で、美しいエリザベスとは一対の人形の様に二人はお似合いだった。
二人の仲は良好でいつも一緒に過ごしていた。逆にエミリーは厳格なスタンレー侯爵と何故か気が合い、本当の祖父の様に打ち解けて親しくなる。
お互いの領地が隣同士なのでよく行き来して楽しく過ごした。
エミリーが10才の時、アルフレッドとエリザベスは王都の学校へ入学する。それからは二人は長期休暇にしか帰省しなくなり、その寂しさを紛らわすようにスタンレー侯爵領を度々訪問しては、大伯母に叱られる日々を送っていた。
そんなエミリーも13才になると伯母は正式に跡取りとして養女申請を提出し、本格的な跡取り教育が始まった。厳しい家庭教師を増やされ、簡単な領地経営の雑務を事細かく叩き込まれた。
段々窮屈な生活にはなっていったが、エミリーはそれを苦にした事はなく、逆に期待をかけてくれる大伯母に感謝するようになる。それは今まで姉のエリザベスの影から抜け出せた瞬間でもあり、不出来な妹としか見られなかった自分が誰かに認めてもらえた喜びの方が大きかった。
その二年後、大伯母は急に倒れて、エミリーの生活は一転する。
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