姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています

春野オカリナ

第1話 始まり

 王宮での夜会。社交界に不慣れなエミリーは、中庭で夫を待っていた。

 声がするので近づくとそこには姉のエリザベスがいた。


  「アル、エミリーと別れて私と結婚して」

  「何を言っているんだ。もうエミリーと結婚している!だいたい君との事は終わったはずだ」

  「私達は愛し合っていたじゃない。あの頃に戻りましょうよ」

  「無理だ。もうあの頃には戻れない」


 突き放そうとしたアルフレッドの手が躊躇している。その瞬間をエリザベスは見逃さなかった。すかさず彼の唇に強引にキスをした。アルフレッドは直ぐに引き離そうとした。


 だが、アルフレッドは知らない。この光景を妻のエミリーに見られている事を……


 エリザベスはわざとエミリーに見せつける様に仕向けたのだ。お互いの唇がはなれる瞬間エリザベスの口角が上がっているのをエミリーは知っている。


 (ああ、邪魔者はやはり私なんだわ)


 夫と姉の密会をこれ以上見ていたくなくて、エミリーはそっと広間に一人で戻ることにした。

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