第7話 後悔
アルフレッドが控え室に入ると、顔を青くしたエミリーの姿があった。
「エミリーすまない。君を一人にしてしまって…」
「私は大丈夫ですから、どうぞ会場にお戻りください」
「だが、そんな訳には……」
「ですから、もう良いのです。これ以上、私を惨めな気持ちにさせないで下さい。私はもう姉の代わりにはなれません。姉とやり直して下さい。そして、私と離縁して下さい」
「な、何を言っているんだエミリー。エリザベスとは何でもない」
「そうでしょうか。中庭で密会なさっていたではありませんか」
中庭でエリザベスといる所をエミリーに見られていた事を知ったアルフレッドは何度も「誤解だ」と説明したが、エミリーには届かなかった。
それは今までエミリーを知らず知らず蔑にしてした当然の報い。この時になってようやくアルフレッドは自分の行いがエミリーを深く傷付けていた事を初めて理解し、後悔した。
自分の中途半端な態度がエリザベスを増長させ、エミリーを傷付けたのだと、そしてオーガストからの忠告はこの事を示唆しているのだと。
アルフレッドに、長年溜まっていた気持ちをぶつけたエミリーは、泣きながら気を失った。アルフレッドは医師を呼び、エミリーの容態を訊ねた。医師から告げられた言葉に
「これで、エミリーとの関係も修復できる」
そう考え、侍女達にエミリーを任せ、護衛に誰も入れない様に指示した。
アルフレッドはベットに横たわるエミリーの額にキスをしながら
「目覚めたら、今度こそ本当の夫婦になろう。もう一度やり直そう」
後ろ髪を惹かれる思いを断ち切る様に部屋を後にし、オーガストにどう報告すべきか思案しながら会場へと向かった。
会場に戻るとオーガストから
「どうやら、気持ちが固まった様だな」
「はい、ご心配をおかけしましたが、もう大丈夫です」
「そうか、なら安心だ」
アルフレッドはオーガストの洞察力の高さに改めて感心した。
(殿下にはお見通しだったんだな)
オーガストは王太子と並んでとても優秀な王子。だが、それ故に後の禍の種にならない様に臣下に下り、結婚と同時に王位継承権を放棄し、未来の宰相として兄王子を支える為に公爵家に婿入りする。
(この方には及ばないかもしれないが、いつか自分もこの方の様になりたい)
アルフレッドは改めてオーガストの補佐官としての目標を心に誓っていた。
二人は静かに会場のある人物を目指して歩いて行った。
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