美文を生み出す秘訣がホットクックだったとは……

 文が美しかったり、語りが上手な方の小説を見ると「なに食ったらこんな小説かけるんやろ」といつも思う。初めて坂水さんの小説を読んだときにも思った。「この人、なに食ってるんやろ」と。

 この疑問に、見事に答えてくれるエッセイだった。
 坂水さんの艶のある文や巧みな物語の源泉が、まさかホットクックにあったとは驚きだ。(たぶん違う)

 本作を読むと「小説だけじゃなくて、エッセイまで面白いとか、なにそれズルい」とうらやましく思ってしまう。エッセイを書くのは、小説を書くのとはまた別の難しさがあるように思う。面白いエッセイを書こうと思えば、なおのことだ。
 それはきっと、自身を俯瞰する視点だったり、私生活を切り売りする覚悟だったり、自虐のさじ加減だったり……小説とはまた、別の能力が求められるからだろう。

 とはいえ、坂水さんはきっとそんな事なんて意識することもなく、この楽しいエッセイを書き綴ったのではないかと思う。しかも楽しみながら、こともなげに……。
 くそ! これが才能の違いってヤツか!(失礼)

 実は一年ほど前、煮込み料理で楽をしようと電気鍋を物色したことがある。その時、ホットクックも選択肢の一つとして挙がっていた。けれども、けっきょく選んだのはアイリス○ーヤマの電気圧力鍋だった。
 あの時ホットクックを選んでいれば、もっと艶のある文章が俺にも……。(だから違う)

 ちなみに電気圧力鍋は、加圧機能を使うことなく何度か肉を煮込んだ後、ホコリをかぶりながら次の出番を待ち続けている。そういうトコロやぞ、俺。

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