誘惑に負けちゃった、だって男の子だもん
「さっすがカムイ! 頼りになるー!」
「あっ、ああ、任せとけ」
……うっ、くそ面倒臭い!
なんで俺また……アルテミアを虐めなきゃ行けないんだよ!
好きだった女の子に腕を組まれ、胸も当てられてる。
だってしょうがないじゃないか、そんな感じで頼み事があるなんて言われたら。
彼女の評判を下げる事なんて出来ないし、彼女に精神的ダメージを与える事なんて出来るわけない。
そんなことしたら、返り討ちにあうぞ!?
……それが分かってるから俺に頼んだんだろうけど。
……なんか、チェルシーらしくねぇ。
思い出の中の彼女と今目の前にいるこいつ、姿形は同じだけど、中身がまるで違う。
ずっと思い続けていた彼女は、明るくて優しい子だった。
けれど、今のこいつは、明るくて自己中心的なやつだ。
……なのに、なんで断れないんだよ。
「なぁ、チェルシーやっぱさ……」
「きっ、貴様ぁ! 何をしている! チェルシーから離れろ!」
……嘘だろ。
頭が真っ白になった。
勇気を出した瞬間、気持ちを引っ込められた。
真っ黒なオーラを出して、どう殺してやろうか見たいな迫力でこっちに迫ってくるライゼン様。
嘘だろこんなのってあるもんか!
「あっ! ライゼン様ぁ!」
それを見た瞬間、彼女は俺の腕を話して彼にすり寄った。
「チェルシー……あいつに、何をして……!」
「ちょっと頼み事をしただけです! 私達に酷い事をする彼女にお灸をすえて貰おうと思って!」
ニコニコする彼女を見ると、彼は怒りを押え、落ち着いた表情を見せる。
「それで? 貴様は何をするのだ? 彼女を陥れる為に」
「えっ? えっーあーそれはまだ話し合い中で」
「では、今決めろ。今すぐにだ。そうしたらさっき腕を組んでいたことは許してやる」
おっ、横暴な! しかも俺のせいじゃないし!
独占欲の塊かよ! このヤンデレ迷惑皇子!
「あっ、そうだ教室に彼女の鞄があるはずだ、あの女、俺が目を離した隙に居なくなりやがって!……こほん、それはどうでもいい。その鞄とってこい」
やることちいせえ!
怒りで我を忘れてやがるこいつ!
「で? やるのか? やらないのか?」
「やっ、やります! 今行きます!」
何されるか分からない恐怖心で勝手に口と足が動いてた。
本当はこんな事したくないけど、仕方ない!
鞄を取ったら直ぐに持ち物とか他の鞄に入れ替えよう!
教室に入り、彼女の席を探す。
窓際の後ろから2番目の席が彼女の席だ。
鞄が机に掛かっていたから誰も居ないのを確認して素早く盗って……
「……何してるの」
「あっ……」
逃げることは出来なかった。
なんでタイミングよく彼女が来るかな。
「カムイ君、何やってるの? それ私の鞄何だけど」
「こっ、これはその!」
「見たところ、届けようとしてくれた訳じゃないわね」
腕を組んで鋭い目付きを俺に向けるアルテミア。
「違う! 違うんだアルテミア!」
「何が違うの? 私は貴方が何をやろうとしていたのかを聞いただけ。理由や言い訳や過程を聞いたわけじゃないのよ?」
あの時と同じく彼女は冷静にただ真実を問いただす。
その圧に思わず萎縮する。
「その……あの、ごめん。お前の鞄……」
「おい、カムイ! 遅いぞ!」
俺が彼女に謝ろうとした瞬間、機嫌の悪いライゼンが勢いよく扉を開けた。
……嘘だろ!? なんで!? あー! もう!
こいつらタイミング悪ぃな!
俺の気持ちを他所に、顔を見つめ合うアルテミアとライゼン。
その瞬間二人の間に見えない稲妻が走る。
目と目が合う瞬間恋に落ちるというがそうでは無い。
これは恋より激しい戦争の始まりだ。
ライゼンは白目を向いて青ざめて、それを見たアルテミアはニンマリと悪い顔をみせる。
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