アルテミアとめんどくさい騎士

……情報を得たけどぶっちゃけ何すればいいんだろうか。

まだ、主人公が何股も掛けているなんてあの写真だけじゃ根拠はないし。


「うーん」


「アル様、アル様! 私の話聞いていました?」


ぷっくり顔をふくらませてアリアは私に顔を近づける。


「ごめんごめん、聞いてなかった」


「むぐぐやっぱり……もっ、もしや情報も持ってこない約立たずの話など聴く気にもなれないと!?」


「ちょっ、ちがっ!」


「申し訳ありませんアル様! 私あの女より優れた情報を得てきます! 少々お待ちをー! 私は約立たずではないと言うことを証明してみせますわー!」


……いっちゃった。

話も聞かずに彼女は足をグルグル回して飛び出した。

帰ってきたら誤解どうやってとこうかな……


「あー! 何なのあいつら!」


窓の外から聞き覚えのある声が聞こえてきたので、ちょっとドアから外に出てみる。


「もーどうしたのさ、かっかしてまた女絡みかい? カムイ」


声の聞こえてきた方向に向かってみると、中庭の大きな木の下のベンチに、さっき絡んできた拗らせマンと金髪の少年が座って昼ごはんを食べているのが見えた。


……あっ、あれはギルガルド!

咄嗟に体を物陰に隠して彼らの会話に聞き耳を立てる。


「また皇子様達に気がたってるの?」


口にサンドイッチを頬張りながらどうでもよさそうに彼にそう言った。


「その皇子達よりヤバいやつらだよ。知ってるだろ? あの悪魔の様な女」


失礼な!


「アルテミア様の事?」


「その名を出すな!」


ちょっとちょっと、なんで名前を呼んじゃ駄目な人を言ったみたいになんてんのよ。


「えぇー、だって彼女凄い人気者だよ? 平民の中じゃ皇帝より彼女のことを王にしたいって言う人達が多いし。僕も彼女のこと結構応援してるよ? まぁ、でもそんな事知られたら騎士団から追い出されちゃうけどね」


へらっと笑って彼はそう言った。

そうだ、ギルガルドは史上最年少で騎士団の試験を突破し、騎士団に所属しながら勉強のために学校に通わせてもらってるんだっけ。


「お前なぁ……一応貴族だろ」


「あはは、僕は貴族だけど落ちこぼれ貴族だから」


彼はヘラっと笑ってそう言った。


……なーんかこのギルガルド、本編のようなかっこいい騎士オーラがないんだよなぁ。

いや、顔はいいんだけどね。

なんか違うんだよなぁ……


「何言ってんだよ未来の騎士団長、聞いたぞ? また凄いことしたんだろ?」


「あんなのまぐれだよ、それよりカムイはいつ騎士団の試験受けるの? 早く一緒に戦おうよ!」


「……あー、でも俺そんな強く無いし……」


「そんなの関係ないよ! 君、チェルシーちゃんと約束したんだろ? 君を一生守る騎士になるって!」


ギルガルドがカムイを焚き付けるようにそう言うと彼は顔を赤らめる。

あーなるほど、だから主人公に固執してたのか。

うっわー面倒臭い男だなぁ……

そもそも、子供の時の約束なんて主人公覚えてないだろ。

主人公(プレイヤー)だったけどそんな話初めて聞いたよ。


「ばっか! 昔の話だろ!」


「それ引き摺って初恋拗らせて、アルテミア様に敵意むき出しなんだろ? 全くもう、叶わない恋は諦めなよ。近くにいい人なんて沢山いるよ?」


「うるせぇ馬鹿」


「あとそれと、アルテミア様のこと悪く言わない方がいいよ? 過激な信者が多いみたいだから」


「……身をもって体感したから知ってるよ」


彼がばつが悪そうな顔をしたのでギルガルドは子供をあやす母親のように笑いかけこう言った。


「あらら、あぁ、それであいつらって言ったのね。もしかしてアリア様にも喧嘩売ったの? やばいな君、チェルシー派なんて即効ひとひねりだよ。早く彼女のことは忘れて寝返りな。まぁ、やられそうになったら僕が守ってあげるけど」


「そりゃあどうも!」


機嫌を悪くしてそっぽを向くカムイ


「怒んなよ~マイフレンド~」


「ベタベタすんな気持ち悪い!」


機嫌を治してもらおうと肩を組むギルガルドの手を振り払ってカムイは怒った。


……やっぱりなんか違う。

こんな男子高校生みたいなやつだっけ!?

もっと、貴方に尽くしますとか、国と君のためなら死ねるとかそんな騎士道精神に溢れたイケメンじゃなかったっけ!?

そんな気配微塵もないんだけど!?


「つか、さっさと、先生のとこ行けよ呼ばれてんだろ?」


「あぁ、そうだった忘れてた。じゃあまた後でねマイフレンド~」


「そのマイフレンドってのやめろ、キモイぞお前」


手を振って去っていくギルガルド。


「……あっそうそう、アルテミア様に会うことが会ったら言っておいてね」


「何だよ急に」


彼はにこりと笑って私の方をちらりと見てこう言った。


「僕の大切な人に手を出したら容赦しないって」


ばっ、バレテーラ!

つか、何!? ええっ!? あえっ!?

ギル様、もう私の敵っすか!?

冷やせダラダラ、喉がカラカラ。


「「おい! それどういう意味だ(よ)!?」」


ビックリして思わず飛び出た私。

そしたら目と目が合う2人。


「はっははは、どうも~」


「まっ、まさかお前……全部聞いてたのか?」


「あっ、あはは! ……さいなら!」


「待ちやがれ! クソ貴族! ぶっ殺してやる!」


顔を真っ赤にして彼は私を追いかけてきた。

ひぃー! 何でこうなるなよ!

しかも、ギルガルドが既に敵なんて聞いてない!

やばい! このままだと本当に死ぬ!

だっ、誰か私を助けてくださーーーーい!!

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