運命は思わぬ所で変わってくる

……分かってたじゃないか。

俺が彼女に愛されてないことも、あの女が悪人でない事も。

あの絶望的な場面で、一人で足を動かして俺達を救ったのは紛れもない、彼女だ。

自己中心的な理由で人を巻き込んだ戦闘をおっぱじめたのは俺の幼馴染じゃないか。

それを黙って見ることしか出来なかったくせに、あそこで巨大すぎる力に適わないと悟り足が動かなかったくせに。

あの時、チェルシーにやめろの一言も言えなかった俺が彼女に適うはずがない。


なのに……なんで俺は……彼女を敵だと思ってしまったんだ。

悪いのは誰かなんて分かってる、でも分かりたくなかった。

あの人は理由もなしに人を虐げない。

個人的な私怨で人を陥れる様な人じゃない。

それは自分自身が彼女と接して分かった。

彼女が多くの人に慕われる理由が分かってしまった。


「あれあれ~どうしたのそんな悲しそうな顔して」


「ギル……」


どこからともなく、ふらふらとギルガルドは現れて俺の顔を覗き込む。


「もしかして、好きな子に振られた?」


「好きな子なんて居ねえよ」


「……もっ、もしかして誰かに虐められた!? なにされた! 大丈夫か!? あの女か!?」


俺の肩を掴んで物凄い怖い顔をするギル。


「ちっ、違う! そんなんじゃない! というか離せ! 大丈夫だから、お前がそんなんになる必要ねえよ調子狂うぜ……」


俺がため息を着くと彼は安心したように息を吐き俺から離れた。


「それならいいんだけど……でも何かあったでしょ、そんな顔するなんて」


「……お前は、俺の母ちゃんか」


「もしくはお嫁さん」


「はいはい」


「それで? 何があった?」


これ以上変なことをされるのは勘弁だから、アルテミアとあった事を話した。


「ははっ! なーんだ! そういう事だったんだ! 心配してそんした!」


「なんだよ! 人が色々考えてたのに!」


「あはは! ごめんごめん! でも凄いな君の十数年の思いを一瞬にして砕くなんて! アルテミア様はやっぱり凄いや!」


嬉しそうに笑うギルを見てなんか少しイラッとした。

……うんやっぱり、こいつ俺の母ちゃんだ。

母ちゃんと同じ場所でイラッとするもん。


「はぁー……僕はてっきり振られて落ち込んだのかと思ってた、だってあの顔前にした時は……」


「うわー! 言うな! もう過去のことだ忘れろ!」


「チェルシーが! チェルシーが皇子と!」


「黙れ! もう俺は恋なんてしねぇ!」


「どうだか、思いがけないところで運命は変わるんだぜ?僕みたいにね」


「なんだよそれ」


「そのままの意味、まぁ僕のことは置いておいてだ。とりあえず君やるべき事2つくらいあるんじゃないの?」


いたずらっぽく笑って言われなくても分かってるよ。

たっく、こいつは人の事すぐからかうんだから。


「わーってるよ」


「そう? なら教室戻ろ、終わっちゃうぜ昼休み」


「あぁ」


校庭に背を向けて、自分の教室へと俺たちは向かった。


「あっ、あと1つお前に言っておくことがある」


「何?」


「俺は元から振られてるから今更落ち込む必要はない」


「ぷぷぷ、そうだね」



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