現を抜かすは世の常ならず

５歳の頃の失われた記憶。
それは人ならざる友人との思い出であり、封じられた本当の自分を見つけるきっかけでもあった――――。


僕はこの春、高校に進学する。
両親は海外赴任が決まっているため、高校近くの叔父の家「猫屋敷」に下宿することになった。

小さい頃はよく遊びに行った。
いつ行ってもたくさんの猫たちが自由に寛いでいるお屋敷だった。
昔はそんな猫屋敷も叔父のことも好きだった気がするけれど、５歳のころ遊びに行った猫屋敷で迷子になった後から叔父のこともお屋敷のことも怖くなり、以来十年ほど会っていない。
迷子になったことも、なぜ叔父が怖いのかも不思議と思い出せない。

何か不思議で大切なことがあった気がするのに――――。

小さい頃から抱えている妙な体調不良、久しぶりに行く猫屋敷での生活。
ず…続きを読む