レトロモダン異類婚姻譚

 タイトル、キャッチコピー、タグを見て、「あ、これは女性読者を恋する乙女にする間違いないやつだな」という直感を得る。
 結論から述べる、間違いないノベル。

 ベースはバッチリ大正浪漫。
 懐かしさ漂う古風な退廃さを残しつつ、新時代の萌芽となる先進的文化と個人の解放の潮流。
 レトロな日本の風情と、モダンな西洋の洗練さを兼ね揃え、ある意味、何でもありな世界を包括させてくれる、混沌の創作舞台。

 まず、そこだけでもワクワクさせてくれる。

 キャラクターに触れよう。

 家のためのお見合いがなかなか上手くいかない封建的な立場に悩む令嬢、実は訳ありの『千代』。
 この時代において近未来的な象徴となるカフェー、そこの美青年店主であり、表向き資産家の『沖』。おまけに裏を返せばその正体、お狐様ときた。

 この立場の違いや価値観のズレ、対比は、ラブロマンスストーリーと怪異解決ミステリーの2軸にそれぞれ華を添えている。
 特筆すべきは、過去から脱し、『普通』でなくとも『幸せ』であることを選択出来るようになる、2人の関係性のレトロからモダンへの変化。

 そう『個人の解放』は、モダンであり、ロマンだ。

 異類婚姻譚は、日本に限らず世界で見られる。乙女に限らず、世界中のみんな大好き、ってことだろう。
 日本に限ると、ハッピーエンドのケースが多いのもひとつ。なるほど。
 こちらの作品もご多分に漏れず。
 だからオススメ出来る。
 結末の『幸せ』に、きゅんきゅんしよう。

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