合理と感情の狭間で揺れる少年の心の機微、手に汗握る頭脳戦をご覧あれ!

 高校生の夜野煌は悪夢のデスゲームに囚われてしまうが、彼はチーム内で唯一能力を付与されないままの開始となる。この生存を賭けた死闘の中で、彼は自身の存在意義を見い出すため、その類まれなる頭脳を唯一の武器として強敵に挑むのだった。

 本作の見どころは、主人公が繰り広げる巧みな頭脳バトルと、魅力的なキャラクター達が描くヒューマンドラマです。
 主人公の煌はシステムから付加される能力は無いものの、その持ち前の卓越した観察眼と洞察力により斬新な戦術を打ち出し、仲間達からその能力の高さを認められていきます。彼の魅せる頭脳バトルは読者を納得させ得る確かな合理性を伴ったものであり、その戦闘過程が作者様の巧みな文章力で描写されていることも相まって、とても惹き込まれる素晴らしい仕上がりとなっています。
 主要メンバーは、聡明な合理主義者で人間不審の煌、煌の想い人で心優しい完璧主義者の紅葉、頼れる兄貴分の玄二、気弱な最年長の夢莉、掴みどころの無い音子ですが、その個性溢れるキャラクター達の在り方が細緻に描かれており、とても感情移入しやすくなっています。特に煌が生存のために合理性を追求しつつ自身の感情との折り合いを付けていく過程は、大きな見どころと言えるでしょう。また、生死を共にする仲間との確かな絆が、煌の閉ざされた心を溶かしていく様子は読んでいて心温まるものがあります。この非情な世界で彼がどう成長していくのか、皆様にも是非見届けていただきたいと思います。

 他に類を見ないほどに圧倒的な没入感が得られる作品であり、一度読み始めれば夜を徹して読み耽ること請け合いでしょう。充分なお時間をご用意の上、ご覧くださいませ。

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