ストーリー展開が癖になる? 曲者揃いのデスゲーム!

 読者諸兄姉は、『ブラック・ベルベット』と呼ばれるカクテルを御存じだろうか。
 スタウト、又は黒ビールと、シャンパン、又はスパークワインを同量で割ったカクテルの事で、液色は夜を思わせる黒いべルベット。
 味の方はシャンパン、又はスパークワインの種類によって、やや甘口から辛口までの調整が可能だ。
 そんなブラック・べルベットになぞらえるのにピッタリな本作品の解説に移ろう。

 本作のストーリーは概要欄を読んで貰うとして、特徴をかいつまんで説明したい。
 本作最序盤は、デスゲームからの脱出に主眼が置かれている。
 能力に恵まれない主人公である『夜野 煌(よるの こう)』が叩き出す知略の数々に、読者諸兄姉は感嘆の声を上げる事だろう。
 そのきめ細かく滑らかな知略はまるで、ブラック・べルベットの黒い液面に蓋をする泡の如し。

 ハード一辺倒でなく、ギャグ、ラブコメ要素も抜かりない。
 エキセントリックな人物達が多数登場し、読者諸兄姉を時に爆笑、時に切なさの渦に巻き込んでくれる。
 シャンパン、又はスパークワインで甘みの調節ができるブラック・べルベットの様に、ギャグシーンとシリアスシーンとのメリハリが効いているのだ。

 そして、作者の綿密な調査がバトルシーンやストーリー背景に説得力を与え、深いコクをもたらしている。

 そんな作品が美味くない訳がない。
 読者諸兄姉も御相伴にあずかってはいかがだろうか。



 さて、これからブラック・べルベットを楽しむとしよう!
 そういえば……主人公である夜野 煌はストーリーが進むといわゆる覚醒、俗な言い方をすればパワーアップするんだったな。
 その時のコスチュームは、主人公の名を体現するかのような黒。
 頭髪にもメッシュ模様が入っていたと思う。
 それも、主人公名の同音異義語である【紅(こう)】だった。
 普通にブラック・べルベットを楽しむのも悪くはないが、せっかくなので一捻り加えてオリジナルカクテルに挑戦したい。

 ベースは勿論ブラック・べルベット。
 そこに、バースプーンの背を使って静かにブランデーを注ぎ入れる。
 ブラック・べルベットの泡の下にブランデーの層が上手く乗っかれば完成。
 液面の黒と泡のクリームに挟まれた紅が美しい。
 すぐにでも味わいたくなるが、オリジナルカクテルで肝心なのは名前だ。
「オリジナルカクテルには命名の儀式が必要不可欠なのだ!」と、大仰な物言いをしてみたものの、名前はすでに考えてある。
 覚醒した主人公にちなんで、【叛逆者(リベール)】としたい。

 彼らの道がこれからどうなって行くのか、【叛逆者(リベール)】を楽しみながら待つとしよう――。

その他のおすすめレビュー

モブ モブ夫さんの他のおすすめレビュー197