甘苦い悪魔の誘惑に、貴方は耐えられるかな?

 読者諸兄姉の諸君、御機嫌よう。

 本作は、最近本邦に上陸したブレンデッド・スコッチウイスキーである〖グレンドーワン〗に喩えたい。

 本作には主人公を始め多くの悪魔が登場し、活躍する。
 その様は、いくつもの風味が複雑に絡み合うグレンドーワンそのものだ。

 また、悪魔である主人公を使役する小学生女児を始めとする人間達の身近な葛藤も、作風にほろ苦い印象を与える。
 作者の描く人間……と悪魔模様は、単純でありながらとても味わい深い。

 文章自体は簡素で、無駄な修飾も無くストーリーはスムーズに進む。
 これも、スモーキーであるにも拘らず吞みやすいグレンドーワンを彷彿とさせる要素だ。

 更に、悪魔崇拝や秘密結社について造詣の深い御仁には、作中要素の考察も大いに捗ると約束しよう。
 特に主人公(バ◯ル)と職場の上司(ア◯タ◯ト)の力関係とその変遷は、現実の悪魔崇拝結社の趨勢をモチーフにしているのではないか、と思える素晴らしい出来。

 人間の堕落がテーマの一つでもある本作。
 矢張り、甘苦い風味のグレンドーワンを嗜みながら読むのが最も美味いのではないだろうか――。



 さ~て、久しぶりのレビュー投稿も終わった事だし、動画でも見ながらウヰスキー吞むぞ~って、軒並み値段上がってて悲しい……。

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