現実的でどこか冷めてる梅原隼人、頭はいいけど遠慮がちな石岡博、ともかく体力バカで元気な佐藤大地は友達だった。
小学生最後の夏休み、彼らは子どもたちだけの旅行を計画し、”ノーコンテンツヴィレッジ”な玖津ヶ村までやってきた。
佐藤大地の遠い親戚が営んでいる旅館に泊まるため。
しかし、彼らが訪れた玖津ヶ村には大きな秘密があったのだ。
知らずに巻き込まれた彼らは、やがて世界の平和を脅かすような大事件に立ち向かっていくことになるのだった。
はい、佐藤大地君です。
兎にも角にも佐藤大地君です。
三人の少年+主要登場人物のそれぞれがキャラが立ち、役回りも明確ですが、佐藤大地君なくしてこの物語は成立しえないのです。
それはなぜか?
読めば分かります。
いや、隼人君も博君もいないと成立しないんですけどね。ちょっと大げさに言ってみただけです。
とりあえず、飲み物を飲みながら佐藤大地君を読んではいけないことだけは明白です。
ともかく性格の違う三人組が、あの頃の男の子特有の甘酸っぱい経験をしたり、時には大喧嘩などもして、なんだかんだ協力し合って脅威に立ち向かい、そして最後の事実に驚愕を禁じえない、質の良い少年冒険譚でありました。
あの夏の日の冒険に浸りたい皆様にお奨めです。
本作は夏の思い出を残すため田舎の旅館に泊まりに来た三人の少年達が怪異に巻き込まれる物語です。
等身大の少年達を主人公にした謂わばジュヴナイル小説。そして、珍しくもクトゥルフ神話が絡む内容であり、その恐ろしさと不気味さ、特徴がよく表現出来ていて、臨場感のある恐怖を読み手に与えてくれます。
特に子供ながらの感性や好奇心の表現がとても上手いと思いました。読んでいてすごく懐かしい気持ちにもなりましたし、少年期の青春と思い出を振り返りたいと思う読者の方には是非とも読んで頂きたい一作だとオススメします。
一本の映画を見終えたような満足感、読後のスッキリ感、その点でも高く評価出来る作品です。
本作は完結を迎えましたので、この機会に手に取ってみては如何でしょうか。
底なしアホの原始人、周りが見えすぎる生意気少年、臆病なムッツリスケベ、クソガキ三人組が小学生最後の夏休みを満喫しようと訪れたのは、海と山しかない小さな田舎村。
畳に障子、ブラウン管テレビに扇風機というレトロな宿で出会ったノースリーブの女の子と海で泳いで駄菓子屋に寄って、ドキドキな夏休みが始まるのかと思いきや……
あまりにも不穏な昔話、取り返しのつかない選択、宿に戻ってみれば奇妙なお札がびっしり張られた部屋、決して開けてはいけない襖。その夜悲鳴とともに海の底から現れたのは……みんな大好き『深きもの』。少年達はいつしか深淵を呼び寄せてしまっていたのです。
廊下に迫る濡れた足音、壊れたラジオのように繰り返される声真似、地下から迫る轟音、一枚また一枚と破られていくお札……焦燥と恐怖と絶望の中でもやっぱりアホで、やっぱり生意気で、やっぱり臆病な三人組は一筋の光を頼りに強大な魔に立ち向かう。
クトゥルフ神話の絶望感と少年達の勇気が織り成す恐怖の夏休み、ぜひご一読ください。