ある若殿の苦難

これは、おそらく歴史の教科書では触れることもない戦国時代の一幕。ある若殿が居城を追われた直後から始まる本作は同作者が執筆した『西の桶狭間』の前日譚になるが、どちらから読んでも面白い。歴史小説入門としても秀逸で、主人公が少年ということもあり、武士の世における家同士の複雑な関係性や政治よりも、その時代を生きた人間のドラマが重点的に描かれている。城を追い出された若殿と、不仲な継母の貧乏生活から始まる物語――というと堅苦しいですが、不器用な親子の物語は最初の一ページ目から、きっと読者を虜にしてくれます。是非、ご覧ください。

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