下剋上華やかなりし戦国時代。
この時代のファンがあこがれるのは、小田原城を乗っ取った北条早雲や、美濃一国を盗った斎藤道三など、壮大なスケールのハイジャック犯や窃盗犯たちの物語。
我々が心躍らせるのは、こうした「乗っ取る側」の梟雄たちの活躍です。
では、「乗っ取られた側」の物語は?
歴史は弱者に冷たいもの。自分の城や国を乗っ取られた負け犬の物語が語られることは滅多にありません。しかし、人生始まって早々に自分の城を乗っ取られるという逆境に遭遇しつつも、己が才覚で危機を乗り越え、ついには数か国の主にまで成長したとすれば?
本作は、そんな「乗っ取られた男」の、最初の物語です。彼の正体は当初伏せられていますが、置かれた状況はすぐに判明します。そこに訪れた謎の僧侶が、彼の運命を変えて……。
助言者たる僧の正体、そして主人公の正体は、歴史好きなら思わず膝を打つあの人。一見縁のない二人ですが、ゆかりの土地が二人の英雄を結び付けています。ちなみにこの「地縁」は史実に基づいていて、その点も歴史好きにはたまりません。
今風に言えば、『追放されたのに戦国大名になりました・序』とでも呼ぶべき本作。続編も含め、ぜひご一読ください!
非常に読みやすい短編で、一時間足らずで読むことが出来ますが、シンプルで力強いシナリオで、かつ内容がしっかりと詰まっているので非常に高い満足感や爽快感を得られます。
本作は同じ作者さんの別作品の前日譚となります。
しかしながら登場人物の多くは、その名前がラストまで伏せられています。
苦杯を舐めさせられたひとりの少年とその継母、その逆転劇を追いながら、読者は彼らやその協力者の正体について探っていく。自身の歴史的知識を駆使して、その最後に答え合わせを知り、意外な正体に驚けるというのが、本作の醍醐味と言えるでしょう。
また、その名や幾つかのエピソードを知りつつも、知らなかった意外な事実も発見できます。
寸暇を見つけて是非とも多くの方に手に取り、戦国乱世の黎明期、その一幕を楽しんでもらえればと思います。