乙女も漢も関係ない。「性別:魔法少女」

 異世界からやってきた魔女と契約し、魔法少女へ変身、その身分はヒーロー、或いはヒロインと呼ばれ、空想世界にしか存在しなかった怪物と戦う――大雑把に纏めてしまうと、レトロな怪物退治、流行の魔法少女にTS要素と、燃えばかりが前面に出てくる気がしてしまいますが、本作は、私は熱いアクションと、篤い情の物語だと感じています。

 登場人物の多くは学生で、怪物の存在もヒーローやヒロインが何とかしてくれる世界では、精々、台風くらいの脅威にして感じられない空気があるように思える中、学校生活を満喫する方を優先させています。

 責任感や危機感はないのか、無軌道すぎるのではないかと感じる事もあるかも知れませんが、私はストイックさよりも年相応、等身大の気取らない雰囲気を重視しているように思えます。

 そんな雰囲気があるからこそ、その怪物となる登場人物の背景が、より暗いコントラストとなり、その闇が払われるクライマックスで、主人公の選択、言葉に開放感を憶えました。

 スナック感覚で消費される物語が多い中、少し苦くて、とろける甘さのある、正しくライトノベルです。

その他のおすすめレビュー

玉椿 沢さんの他のおすすめレビュー242