ウィッチドライブ ~女の子と事故って魔法少女になり身体の相性が良いから働かされてるんだけど俺はこれを許すべきか? 契約したからもう遅いわよ〜
沖田ねてる
第一章
第一話① 魔女ノ来訪
『――"魔女ノ来訪(ウィッチドライブ)"、起動』
「な、なんでアンタみたいなのがこんな所に居るのよッ! リハのつもりがそのまま契約しちゃったじゃないッ! どうしてくれるのよッ!!!」
こうして、ただの男子大学生だった筈の俺は、巨乳の女の子へと生まれ変わった、ウッソだろお前。ま、まあ、待て。一度落ち着こう。状況を整理しようじゃないか。どうしてこうなったのかをまとめれば、何か見えてくるかもしれないしな。
俺は高崎(たかさき)ユウ。何処にでもいる男子大学生だ。俺は今日、誰にも邪魔されないで大学の課題を終わらせようと、一般教養の講義をサボって学部棟の屋上に来た。そしたら、何やら怪しげな儀式みたいなことをしているこの女がいたんだ。
腰までありそうな長いワインレッドの髪を揺らし、黒い三角の帽子を被り、着ているのは黒いローブというものだろうか。よく魔法使いが着ているイメージの服装で身を包み、先っぽに宝石のような石がついている杖を持っている彼女の目はつり上がっている。背丈は平均男性くらいの身長の自分よりも、少し高いくらい。あと胸はないな。しかも、なんか薄い。そんな奴いたっけ的な存在感がないとかそういう話ではなく、本当に身体が透けて見えそうな感じで薄かった。身体を物理的に水割りにでもしたんだろうか。
それを見た俺が声を上げたら、この女が目の前で光り始め、やがて細かい光の粒子となってそのままこちらへ向かってきた。驚きのあまりに動けないでいた俺の中に光が入ってきたその瞬間。着ていたTシャツがパンパンになるくらいに胸が盛り上がり、股間のイチモツは引っ込み、黒い髪の毛も腰くらいまで伸びて、声も女性のように高くなった。つまり、俺は巨乳の女の子になってしまったってことだ。
うん。いや、ごめん。何も見えてこなかったわ。俺も自分で言ってて、何が何だか解らない。あった筈の股間のイチモツがなくて、めっちゃ違和感が凄い。何処に行ったんだ我が息子よ?
しかし、人を勝手に女の子しておいて、その全ての責任をこちらにおっ被せ、挙げ句謝りもしないこの女を、俺は許すべきなんだろうか? と言うか怒ってもいいよな? フツーに考えて。
『……は? 目標が暴走? ちょ、聞いてないわよそんなの!? こっちは手違いで……』
そしてさっきまでそこにいて、その後に光となって消えた女の声が俺の頭の中で木霊している。
いや、あの、何が起きたのマジで? こっちとしては状況が一切飲み込めていないんだが。まずは話をさせて欲しい。状況説明とかそういうのを。
『……わかったわよ! 行けばいいんでしょ!? あああああもうッ、時間がないッ! このまま行くわよッ!』
「……は? いやお前、俺に何したんだよ? なんか声は高くなってるし、胸元キツイし、下半身にある筈のモノがない違和感がおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」
そして俺の意志とは関係なく、何故か勝手に動き出した自分の身体を見てびっくり仰天、声を出さずにはいられなかった。
足は勝手に走り、手にはいつの間にか先ほどの女性が持っていた杖が握られている。だがさっき喋れたことを考えると、身体は動かせないのに声だけは出せるみたいだ。どういうこっちゃ。
そのまま俺の身体は屋上の隅に向かい、身を屈めたかと思うと一気に跳び上がって、俺達がいた大学にある十階建ての学部棟の屋上から下に飛び降りて、
「ってウッソだろお前ぇぇぇええええええええええええええええええええええッ!!!」
俺の身体は宙に舞った。咄嗟に目を閉じようとしたが、目すらも俺の思い通りに動いてくれなかった。
死んだッ!
そう思ったが、女の子となった俺の身体は何の衝撃も痛みもなしに着地して、何事もなかったかのようにまた走り出している。なんで? 俺のびっくりが止まらない。脳内にさっきの女の声が響いてきて、びっくりが倍プッシュ。
『うっさいわねッ! 説明は後ッ! とにかく時間がないのッ! 今は大人しく使われなさいッ!』
「なんなんだよこれはァ!? 一回止まれよッ! 俺ぁさっきから混乱しっぱなしで一切合切状況が見えてこねーんだよッ!」
『後でって言ってるでしょッ!? こっちは操作の順応に必死で……あれ? なんか抵抗感が全然ない……?』
人を勝手に走らせておいて、この女は何か気づいたかのようにブツブツと喋っている。
いやおい、そんなことどうでもいいから、俺の身体止めてくれない?
『こんなに思い通り動かせるもんなの……? あたしが入った時もスムーズだったし、それに高ぶるこの感じ……嘘……共鳴率100%……ッ!?』
自分で走ってるとは思えない、すんごいスピードで景色が流れていくのに全然慣れないの。酔いそうだから止めて。いや、むしろ止めろください。
『……アンタとあたし。身体の相性が良いのかも……』
「どうでも良いから止めろっつってんだろうがァァァッ!!!」
俺の叫び声も虚しく、大学を離れて強制的に連れてこられたのは、川の側にあるビルの改装工事途中の工事現場だった。既に何台かのパトカーが止まっており、何事かと野次馬も集まっている。
それらを全て無視して、工事現場となっているビルの三階に向かって一足飛びでジャンプ。窓ガラスを割って無理矢理飛び込まされたその中には、通報を受けてきたであろう幾人かの警察官の姿と、
「キシャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
縦に伸びたスライムみたいな形をし、身体中の至るところにある人間の口から黒い粘液を吐き出し続けている、複数の触手をもった真っ黒い化け物がいた。
「ギャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
いやもうなんなの、こんな化け物が目の前にいるとか信じられないんだけど。よく喧嘩してた不良とかヤクザかぶれのお兄さん達の方が千倍マシなんだけど。
というかこの化け物、まさか最近ニュースでやってた"異形(いけい)"というやつでは?
『ああもう、こんなに大きくなってるなんて! すぐに片付けてやるッ!』
驚いている俺の頭の中で、あの女が叫んでいる……ってちょっと待て。今なんつった? すぐに片付けてやる? それって誰が?
まさかとは思うけど……。
『覚悟しなさいこの気持ち悪い異形ッ!』
「ってやっぱやるの俺なのかよォォォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
俺の拒絶の意志は全く伝わらないまま、女の子になった俺の身体はこの気持ち悪い異形の化け物に向かっていった。
ホント、どうしてこうなったんだ……俺は絶叫しながら、少し前のことを思い出した。
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