概要
愛し合ってしまった姉と弟の物語
実の姉を恋い慕う弟、弟を愛する姉。常に手が届くからこその苦しみ、想いの行く末。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!濃厚なブランデーケーキのような
”真実の少し暗い瞳に、結子はふと恐ろしさが甦った。
この弟に好きだと言われ、抱きしめられた夜の恐怖。
恐怖と、もう一つの何か。”
この小説には大人をぞくりとさせるフレーズが散りばめられています。
なにげない描写にもいっさいの無駄がなく、一話が長いのに少しの中だるみもなく、緊張感を孕んだまま揺らめく情念を淡々と描いてゆきます。
ある日突然弟に告白された、社会人の姉。
困惑し恐怖しつつも、自分の中にある”何か”に結子は気づいています。
そのことは冒頭「はじめに」に独白のかたちで明かされているのですが、その見せかた、構成がまた巧みです。
モノローグの使い方や語り手の切り替えのセンス、完璧な筆…続きを読む - ★★★ Excellent!!!姉と弟の、近くて遠い関係性を鮮やかに描きだす一作
1話目を読んだとき、淡々とした語りの底に熱を孕んで沈んでいる感情があるなあ、と魅力を感じました。読み進めるうちに止まらなくなり、一気に読み終えました。ぜひ多くの方の目に読んでいただきたい作品です。
姉と弟の恋愛。家族間・きょうだい間の恋愛は数多の小説で描かれてきましたが、本作は「禁断の愛」や「いけない関係」という通り一遍の表現を用いるのが憚られる深さを有しています。
家族としての二人や日常生活の描写を挟みつつも、話数を経るごとに心の底で沈んでいた感情がゆっくりと浮かびあがり、変化を遂げる関係性が克明に綴られていきます。懊悩し、進み、止まり、互いへの感情をときに疑問視しては確かめてい…続きを読む