概要
ロンドン・東京・ビルバオ——目的のない旅の途中で、過去と出会う
クリスマス気分に浮かれるロンドンで、私は高校生の頃に付き合っていた人と再会した。ビールとサングリアで乾杯してぽつぽつと近況を話すうちに、当時の想い出がゆっくりと染み出してくる——それは二度と戻らない、けど現実よりも現実的な過去の情景だった。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!ワインのように味わいたい、洗練された大人の関係
高校時代の恋人と大人になってばったり再会、という設定自体はありふれている――――けれど、作者の高い筆力による肉付けが、作品のクオリティーをぐんと高めています。
大人の関係を斬り結ぶための腹の探り合いや、ちょっとしたずるさや駆け引き。そして「私」の目から見た世界の細やかさと鮮やかさ。
たくさんの細かい描写、それによって起こる感情がロンドンから東京の回想を経てビルバオへと飛び移る舞台にしっくりマッチして、なんとも不思議な読みごたえがあります。
エッシャーのだまし絵、お行儀のよいレプリカ、ワインの苦味といった比喩に使われるモチーフもいちいち大人で洒落ていて、そしてとても的確。
なんだろう、なん…続きを読む