コロシアム

「ここが、コロシアムか……」


 ミネア達と合流した後、コロシアムに向かった。

 コロシアムは楕円形で横に広く、上も見上げれるほど大きな場所だった。

 大会の時間が近いため周りには沢山の人で溢れていた。


「人が多いですね……」

「そうだな……。はぐれない様にしないと」


 俺はそう返事をした後、ミネアとアイリスの手を握った。


「こうしとけば、はぐれないだろ」

「そうだね!」


 ミネアは普段通りに手を握り返してくる。


「そ、そうですね……」


 アイリスは少し顔を赤くして恥ずかしそうにしながらも、手を握り返してくれる。


「今回は絶対に勝たないとな」

「うん。絶対に、だよ! ここまでやる気が出たのなんて初めてだよ」

「頑張ります」


 俺の言葉に応える様に一人一人意気込みを言っていった。

 そして間も無くして中に入ることができた。コロシアムの中はまだ戦う場所ではなく、受付や階段などがあった。


 その中でも一際目を引くものがあった。

 それは剣を立てて持っている戦士の銅像だった。


「これは凄いな……」


 あまりに出来が良かったので思わず言葉を漏らしてしまう。

 銅像なのに剣や人の顔まで綺麗に再現されある。普通なら多少の汚れや、傷があっても不思議じゃないのに。


「これはゼクト帝国を築いた人の銅像らしいですね。名前は——ゼクト・ランスロットと言うらしいです」


 銅像を眺めている俺の横で、人像の下の土台に書いてある説明をアイリスが読んでくれた。


「なるほど。だからこんなに綺麗に保存されてるのか」

「凄いねー! ここまでのもの初めてみたよ」


 俺が納得していると、ミネアも銅像を見て感心していた。


「あ、後、もうすぐ受付始まるらしいよ」


 ミネアが銅像から目を離した後、そう教えてくれた。


「そうか。ならのんびりしてられないな」

「そうだね。早速行くよー!」


 そのテンションの状態で受付に向かった。やる気は削がないことが一番だからな。


「今回の大会に応募したいんですけど」

「応募ですね。——えっと」

「俺はマリウス。こっちがミネア、こっちがアイリス。この三人で登録する予定です」

「あっ! そうなんですね」


 受付の人は驚いた様に返事をした。その様子が気になったため、訊いてみる事にした。


「どうしたんですか?」

「いえ、ただ単に女の人の参加は珍しいなって思っただけですよ。この大会の九割は男の人ですから」

「そう言うことでしたか」


 確かに周りを見ても、ゴツい人から、聡明そうな人までそれぞれいるが、女の人は数えるほどしか居ない。


「それに女の人が出ても、男の人が二人で女の人が一人のパーティーで女の人がサポートに回る形になりますから。二人は珍しいな、と」

「詳しい説明ありがとうございます」


 俺は一言お礼を言った後その場を去った。


 確かに魔術の大会とはいえ、戦うのだから、殴り合いになってもおかしくはない。

 そりゃあ男の方が勝ち易くなるのは誰でも考えられることだ。


 大体の参加者は近距離攻撃、遠距離攻撃、サポート役の三人なのだろう。


 それなら多少面白い事になりそうだな。


「おい!」


 そう思って少しだけ楽しくなってきたところで、誰かに話しかけられた。


「何でしょうか?」

「そんなハーレムパーティーでこの大会に勝てるとでも思ってるのか?」

「えっ? まぁ優勝するつもりですが」


 当たり前のことを問われたので、疑問に思いながらも返答する。

 負けること前提で大会に出る人なんているのだろうか。強制参加でもあるまいし。


 しかし、この目の前にいるガッシリとした体つきの男は、唇を震わせていた。


「そんなパーティーで勝てるわけがないだろ! 舐めてんのか!」


 俺の言葉に気に食わなかったのか、男は怒鳴り散らす。その声のせいでこちらに周りの人の注目が集まる。


「そんな事は無いと思っていますよ。むしろ俺が居なくてもこの二人だけで勝てると思ってますから」

「はっ? 何言ってんだよ。そんなに甘かったら俺は今頃優勝してんだよ!」

「それはお前が弱いからだろ」


 ちょっと言われ過ぎてムカついてきた。ちょっと見ただけで分かる、こいつはミネアやアイリスよりずっと弱い。

 力だけなら負けるかもしれないが、魔法を使えば圧勝だ。


「ちょっと言い過ぎだよ。あの人めちゃくちゃ怒ってるよ」


 ミネアは少し怖がっている様な表情で、止めようとする。


「ああ、そうだな。舐めてるかどうかは大会が始まったら分かるさ」

「楽しみにしてるぜ。無様に負ける姿をなぁ」


 去り際にそう言葉を残していった。いかにもザコが言いそうなセリフだ。


 まぁ、すぐに分かるだろう。


 俺もそんなことを思いながら、その場を後にした。

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