祝勝会そして新しい仲間


「「「かんぱーい!」」」


 大会終了後、俺たちは優勝を祝う為に、街の食堂に来ていた。


「まさか、マリウス一人で全員やっつけちゃうなんてね」

「やっぱり強かったんですね」

「まぁ、一応王宮で働いてたしな」


 王宮魔術師の名は伊達では無いということが、少しは分かって貰えたと思う。


「それなら、私達がやられる前に助けて欲しかったんだけど」

「まぁそれでも良かったんだよ。でもな」

「でも?」

「これからもっと強い魔物や人とかと戦う可能性があるわけだから、俺が居なくても充分戦える様になって欲しかったんだよ」


 まだギルドが始まって日は浅いが、いつか死にそうになる経験があるだろう。

 その時もし俺がいなかったら、マスターがいなかったら、二人で戦わないといけない。


 その時のことを考えたら、死ぬことがないこの大会で真剣勝負に慣れておくべきだと考えたのだ。


「うーん。まだ私には分からないや。そこまで強い敵なんて出てきたことないし」

「同じくです」


 俺の言葉は理解しにくいと言わんばかりに、手を挙げて答えていた。


「まぁ、いつか分かるさ」

「そうだね。今は楽しも!」

「折角、こんなところに来てるんですからね!」


 珍しくアイリスも乗り気で、この祝勝会は大いに盛り上がった。



 祝勝会も中盤に差し掛かった頃、見知った人物が店に入ってきた。

 今日の決勝で戦った金髪、青髪、黒髪の三人だった。


「あっ!」

「あっ……」


 思わずお互いに腑抜けた声を出してしまったが、そのあと軽く会釈した。


「相席してもいいか?」

「ああ、全然大丈夫だ」


 思いがけない形で三人から六人と大人数になってしまった。


「そう言えばまだ名乗ってなかったな。俺がバレス。こっちの青髪がクリス。でこっちの女がルミネだ」


 相席して早々金髪——もといバレスはそう自己紹介をしてきた。


「それじゃあこっちも。俺はマリウス、こっちの朱色の髪のミネアでこっちの銀髪がアイリスだ」


 俺の説明とともにもう一度俺たちは軽く頭を下げる。

 そのあとすぐにクリスが豪快な笑い声とともに口を開いた。


「ガハハっ。まさか本当に一対三の状況で負けるとはな」

「それでも、ミネアとアイリスが一人も倒せないとは思ってなかったよ」

「私たちもギリギリだったのよ」


 ルミネさんが呆れた様に口を開く。


「その後に出てきた人が化け物みたいな人だったからね」


 そう俺のことを横目で見ながら言ってくる。

 その態度に笑う以外の選択肢は取れなかった。


「まぁ、しょうがないさ」

「しょうがないじゃ無いわよ! ちゃんと戦略考えてたらもっと戦えた筈よ!」

「俺たちにそんな器用な事ができると思うか?」

「うっ……」


 図星をつかれた様に言い詰まるルミネ。


「別にあの戦闘センスが有るなら戦略考えると思うけどな」


 さっきの言葉に引っかかった様子で、ミネアが口を挟む。


「まぁ土壇場の判断力はあるぞ。そのお陰でお前に懐に入られそうになった時も、防げたしな」


 ミネアと戦った時のことを思い出しながら、クリスは言った。


「それなら——」

「この二人バカなのよ」

「「馬鹿じゃねえ!」」


 前に聞いたことがある様なツッコミが聞こえてくる。


「そんなに馬鹿なのか?」


 馬鹿とか言われてるがそこまで感じない。むしろ戦闘では役に立ちそうってレベルだ。


「いずれ分かる時が来るのよ」

「まぁ、そうかもな。これから同じギルドでやっていくんだし」

「「「「えっ?」」」」


 俺の言葉に驚いた様な様子で、こっちを見てくる。たった一人バレスを除いて。


「マリウス? どういう事?」

「話が見えません」

「バレス! どういう事!」

「詳しく説明して貰おうか」

「あ、ああ」


 こうして、二人の中だけで完結していた話だったので、相談して無かったことに怒られた。

 それでもミネアとアイリスはお仕置きの件もあり、割と早くに納得してくれた。

 が、


「どうして説明しなかったの⁉︎」

「す、する時間がなかったんだよ!」

「はぁ……」


 ルミネが怒ってバレスは「時間がなかったの」一点張り。

 まぁ時間がなかったのはそうだけど、もう少し、話してもいいんじゃ無いかと思う。

 その横でクリスはポカンと佇んでいる。


 俺も流石に関わってるし話に入ろうと決めた。


「べ、別にどうしても嫌だっていうんだったら無しでも良いけど」

「うーん。別に嫌じゃ無いけど。世界樹なんてギルド聞いたこともないからね」


 やっぱりそこなのか。


「でも大会で、俺たちの強さは分かってくれたと思うんだよ」

「うーん……」

「も、もう約束を破ることは悪いことだし、入ろうぜ」


 ルミネを宥めようとするバレス。


「はぁ……。分かったわよ。曲がり曲がってもバレスはうちのリーダーだし」

「本当か!」


 ため息を一つついた後、堪忍した様に首を縦に振ってくれた。


「本当にありがとうー!」

「助かりました!」


 二人も泣くくらい喜んでいた。


「えっ? ちょっと何があったの?」

「ああ、それはな——」


 こうなった経緯を簡単に説明した。


「なるほどね」

「でも三人が仲間になってくれたら楽しそうって言うのは本当だからな」

「ええ、分かってるわよ」

「それじゃあ明日またギルドに案内して貰おうかな」

「分かった」


 こうして、雷光の三人がギルドに入ってくれる事になった。


「で、結局どうなったんだ?」


 呆けた顔を戻して、クリスさんはそう訊いてくる。


「はぁ、それはな——」


 俺が説明したが中々伝わらず、簡単な説明の筈なのに、一時間ほどかかってしまった。

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