"チーム雷光"正式加入


 祝勝会で楽しんだ次の日。

 俺たちは街の中心にある、大きな噴水で待ち合わせをしていた。


「あ、いたいた! おーいこっちだよー!」


 先に着いたため待っていると、こちらに歩いていくる人影が見えた。

 それがバレス達だと分かるとミネアは大きな声で呼んでいた。


「おはよう。マリウスさん、ミネアさん、アイリスさん」

「ああ、おはよう」

「おはよう!」

「おはようございます」


 ルミネに挨拶をされたので、俺たちも返す。


「バレスもクリスもおはよう!」

「「…………」」

「あれ?」


 ちゃんと挨拶しようと言葉をかけたが、全く返事は返ってこなかった。


「気にしなくて良いわよ。まだ寝てるだけだから」

「は、はぁ」


 少し気になったが放っておく。まぁ、この二人なら有り得なくもないのかもしれないが。


「それじゃあ早速行こうか」

「そうね。案内はよろしくね」

「任せてください」


 こうしてギルドに向かった。俺たちも普段は宿に泊まっている。そのため、今日はまだギルドに行っていなかった。


 歩き始めて少しすると、ルミネとアイリスは楽しく談笑していた。

 同じタイプの魔法使いに加えて同性だから、話が合うのだろうか。


 そう思っていると、


「マスターも驚くかな。私達がこんなにも早くに勧誘成功したって言ったら」


 ミネアが少し悪そうな顔をしながら、話しかけてきた。


「そうかもな」

「マスターが驚いたところなんて見た事ないからね。見れたらちゃんと拝んどかないと」

「確かに。あの人が驚くなんて無さそうだな」


 マスターが感情を表に出してるところなんて、全く想像がつかない。

 そんな事なんてあるのだろうか。まぁ流石に生き物なんだし全く無い訳じゃないんだろうけど。


「ミネアはマスターと長い付き合いなんだよな?」

「うん。もうかれこれ10年以上経ってるね」

「その間ってマスターは感情を露わにしたことがあるのか?」


 少し気になったので訊いてみた。これでなかったら、マスターが驚いてるところが余計に見たくなる。


「あるよ。一回だけだけど」


 ミネアは考える暇も無く言ってきた。そんなに印象的なのだろうか。


「へぇ。どんな時だったんだ」

「えっとね。私が十歳になる前かな。その時に——」


 こうやってミネアはマスターの事を話してくれた。


 ミネアの話によるとマスターは怒ったことがあるそうだ。

 ある日、ミネアが誘拐された時があった。

 ミネアも諦め気味で、今にも誘拐犯に襲われるそう思ったらしい。


 その時にマスターが隣の壁を壊して、中に入ってきたと言う。


「あの時は嬉しさより怖さが勝ったんだよ。マスターの顔が凄すぎたからね」

「ふっ……」


 そう言って目尻の辺りを伸ばしながら表現してきた。その姿に思わず笑ってしまった。


「それで、その後はマスターが相手をボコボコにして騎士兵に突き出したんだ。それが大体の経緯かな」

「なるほど」


 ミネアのことになると怒るのか。まぁそんだけ長く過ごしてたら、家族当然だもんな。


「あ、もうギルドじゃん」

「本当だ」


 そんな話をしていると、ギルドに着いていた。


「へー。ここがね。——そろそろ起きなさい!」

「う、うーん……」

「いっ……」



 ルミネは屋敷の様なギルドに少し驚いていたが、すぐに寝ている二人を起こすためにビンタを喰らわせていた。


「あれ? 何処だここ?」

「まだ宿屋にいた筈なんだけどな……」

「ギルドよ。ギルド。行く約束してたでしょ!」

「おっ! もう着いたのか。覚えがないほど早く着くなんてやっぱり天才かもな」

「そうだな」


 バレスとクリスはそう言って大きな声で笑い合う。


「はぁ……。もう中に入っても良いのよね」

「ええ。そうですね。大丈夫だと思いますよ」


 こうしてルミネを先頭に三人はギルドの扉を開けた。


 マスターは驚いていながらも、バレス、クリス、ルミネを歓迎して新たな仲間ができたことを大いに喜んでいた。

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王宮魔術師という身分主義の世界から追放されたので、実力主義の魔導士ギルドに入ろうと思う〜俺が辞めたら王宮は大忙し、だが俺にはもう関係ない〜 鳴子 @byMOZUKU

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