新しい仲間とクエスト
「えーっと、今回のクエストは魔獣の森の探索。魔物のオークが居るらしいからそれを討伐してこいだって」
依頼書を見ながらミネアはそう読み上げていった。
クエストには町で馬車を見つけてそれで向かっている。
「な、なあ」
「うん? どうしたの?」
「これは何なんだ? 渡されるだけで何にも言われなかったんだけど」
俺はそう言って首に下げていたペンダントを取って見せた。
***
「ちょっと待つんじゃ」
ギルドを出る前ロイズさんに引き止められた。
ミネアは外で待機していろと言うロイズさんの指示で外で待っている。
「何でしょうか?」
「お主にこれを渡しとかんとな」
「うわっ⁉︎」
そう言って俺にペンダントを投げつけてきた。ペンダントの先には赤い魔石が付いておりそれを囲む様に金属がついている様なデザインだった。
「これは?」
「それもミネアに説明してもらうがよい。困った時はそれに助けてもらうんじゃぞ」
「は、はあ……」
よく分からないけどとりあえず付けておこう。危ない物では無さそうだし。
貰ってすぐ首にペンダントをつけた。このペンダントはとても付け心地が良くつけてる感じがしないほどだった。
「これだけですか?」
「うーんと……。そうじゃ!」
俺の問いかけにロイズさんは腕を組んで考える様な仕草をしていた。
「ロイズさんって言う他人行儀な呼び方はやめるのじゃ。これからは仲間になるんじゃしな」
「分かりました、ロイズさ——マスター。これで良いですか?」
「それで良い」
その会話を最後にマスターは俺を快く送り出してくれた。
***
俺の疑問にミネアはすぐに答えた。
「これはユグドラシルに所属してるよって証だね。えっと……、ほら私も持ってるし」
ミネアは純白の服についているボタンを一つ外して、ペンダントを取り出した。
その時にミネアは気にしていない様だが、豊満な上胸と緑色の何かがよく見えたので目を逸らす。
もう少し気にして欲しいものだ。
まぁそれは良いとして、ミネアのペンダントを見てみる。
俺のは先に赤い魔石が付いてあったが、ミネアのには青い魔石が付いてあった。
「なるほど。これを持ってれば何か役に立つとか言ってたけど何か知ってるか?」
「うーん……。それについてはマスターは教えてくれないんだよね。でも一回しか使えないから大事に使えとは言ってたけど」
魔道具みたいなものか。マスターのことだし大事になるまで取っておいて損はないだろう。
「ところでマリウスってさ何でこのギルドに入ったの?」
「えっと……。それじゃあ、それも含めて改めてちゃんと自己紹介するか」
「ああ、良いかも!」
まだちゃんとした自己紹介はしていなかったので、そう提案した。
「俺の本名はマリウス・ダーネルスト。元々は王宮魔術師をしていた。しかし——」
「ちょ! ちょっと待って!」
話の途中でミネアは慌てふためきながら、言葉を遮った。
「ダーネルスト家? それに王宮魔術師なんてバリバリの貴族じゃん!」
「……ああ。まぁ一応」
貴族ということに初めて驚かれた気がする。やっぱりダーネルスト家はちゃんとした貴族だったんだ、と何だか安心した。
「もしかして敬語を使った方がいい……ですか?」
俺が安心しているとミネアはたどたどしい敬語を使いながら訊いてきた。
「いやいや、そんな事しなくてしなくていい。今まで通りで大丈夫だ」
敬語なんてほとんど使われた事がない。だからいきなり使われると背中がかゆくなる感じだ。
それにミネアも使いにくそうだし。
「良かったー! あたし敬語使うの苦手だからさ」
「そんな感じはするな」
ミネアは笑いながらいつも通りに返してきたので、俺も微笑みながら返した。
「むぅ。なんか人に言われると言い返したくなるね」
「ごめんな。悪気は無かったんだが」
俺の発言は気に食わなかったらしくミネアは頬をリスの様に膨らませて怒っていた。
本当に怒っている様には見えなかったが、俺も軽く謝っておいた。
「それじゃあ続きどうぞ」
「あ、ああ。それで王宮魔術師をやってたんだが追放されて、どうしようかと迷ってる時にマスターに会ったんだ。そのままズルズルと」
簡単だが俺の成り立ちを一通り説明し終わると、ふぅ、と一息ついた。
そしてミネアの方を見てみるとぼうっとしており呆気に取られている様だった。
「おーい。大丈夫か?」
「あ、うん。凄い大変だねー……。追放って事は何かやったの?」
「全く。ダーネルスト家は王宮魔術師に似合わないらしいから」
「…………よくその要求飲んだね」
「この国は身分が絶対だからね」
「ああ、なるほどね……」
本当に馬鹿だよな。貴族じゃなくても良い人材は転がってるだろうに。
「おーい。お二人さん。魔獣の森の近くまで着きましたぜい」
俺の話が終わった段階で馬車主に呼ばれた。
「はーい。——じゃあ私の話は後からだね。先にクエストだよ」
「そうだな」
異論もないので俺は頷いて馬車を出るともう少しであろう魔獣の森へと向かった。
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