新たな出会い
「はぁー……」
まさか、家族との別れも言えないことになるとは思わなかった。すぐに貴族街を追い出された。
まぁ、追放されたんだからしょうがないんだろうけど。
でも、皆んなは元気にやってるだろう。今回の事で多少は待遇が良くなればいいんだけどな。
「これからどうしようか……」
多少の貯金はあったので野垂れ死ぬことはないと思うがすぐに尽きるだろう。
どこかで働き手を探さないといけない。でも、市民の暮らしなんてほとんど知らないし、どうしたら良いんだろうか。
「お主強い魔力を持っておるのう」
「え?」
色々考えていると横から声が聞こえてきた。幼い女の子のような声だ。
「あなたは誰ですか?」
振り向くとそこに立っていたのは10歳にも満たなそうな、緑色の髪と白い肌が良く似合う小さい女の子だった。
「わしはロイズ。どこにでも居る普通の一般人じゃよ」
「そ、そうなんですか……」
ロイズさんの言葉に苦笑するしかなかった。
こんなに小さい子が年寄りみたいな喋り方してる時点で普通じゃないと思う。
しかしそれだけじゃない。
「……あなたは何者ですか?」
ドラゴンを目の前にしているほどのオーラ。これ程の人は今までに見た事がない。
「やはり気付くんじゃな」
「誰でも気付くと思いますよ」
「周りは誰も気付いてくれんからな」
周りを見ても確かに誰も気付いている様子はない。魔力量が強い人が気付く、みたいな感じなのだろうか……。
「一応、魔法については結構知識ありますから」
「なるほどな……」
そう言ってオーラを体の中に入れる様に隠していた。
「そんなこともできるんですか」
「普通じゃよ。普通」
「普通じゃ無いですよ。本当に何者なんですか?」
俺は呆れて笑いながらもそう問いかけた。
「普通の一般人じゃって言っておるだろう」
ロイズさんはそう言って笑う。まあ、そう簡単に話してくれるはずもないか。
「お主の名前は?」
「マリウスと言います」
「ほうほう。良い名前じゃの」
「ありがとうございます。ところで何か用でも?」
いきなり話しかけたのには理由があるはずだ。俺が尋ねてみるとロイズさんは口を開いた。
「魔道士ギルドに興味ないかなと思うてな」
「魔道士ギルドですか……」
どんな場所か自体は知っている。
仕事を色んな人に提供していると言う場所らしい。この国だけでも三十以上の魔道士ギルドがあるらしい。
「最近人が減っておるんじゃよ。なんでもここの王様がギルドを消そうと動いてるらしくてな」
「…………」
そんな噂は聞いたことがある。低級とはいえ、貴族の俺に対してもあそこまで酷い対応を取るのだ。
あの王様なら一般人どころか、それ以上に扱いの酷い獣人やエルフが居るギルドは良いように思ってないだろうな。
「そんなわけだから違う国に行って新しいギルドを建てようと思うのじゃ。それについてくる人が少なくての」
「そう言うことでしたか」
なるほど。それで俺に言ってきたわけか。
この国を抜けてまでギルドに所属しておきたいと思う人は少ないのだろう。
でも、こんなにも大勢の人がいてどうして俺に声をかけたんだろうか。
「どうして俺なのですか? 他にも人はたくさんいるでしょう?」
「最初に言っただろう? お主は強い魔力を持っている、と」
「ああ……」
なるほどそれで……。
一番最初に言われたのだ。オーラを隠す前から。この人は相当なやり手だろう。
「で、どうじゃ? 一緒に来てくれるか?」
ロイズさんはそう言って手を差し出してくる。
今の俺は職を失い貴族という立場も失った今、頷く以外の選択肢は無いだろう。
ロイズさんについていけば職も手に入るだろう。何より、もっとロイズさんのことも知りたいし。
「はい。よろしくお願いします。ロイズさん」
俺はロイズさんと一緒に行くことに決めた。
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