あとがき〜カクヨム限定〜


『レゾンデートルの祈り』にご縁があった方々。

 初めまして。ゆずりは一志いっしです。

 

 まず初めに、本作を書籍化していただいたことに、

 そして『レゾンデートルの祈り』の世界に触れていただいた皆様に、

 深く御礼申し上げます。


 この『あとがき』についても書籍に載せたい気持ちは山々でした。

 しかし、私の地の文で作品の世界観を崩したくないこと、そして思う存分物語の余韻に浸っていただきたいという想いから、書籍には載せないことに決めました。

 ですので、この場をお借りしてお伝え出来ればと、書いている次第です。



 本作に関しては二〇一九年の三月、当初は架空の世界を舞台とした設定で物語を構想しました。

『安楽死』という、物語としても極めて触れ難く重たい題材。

 何度も躊躇って、結局執筆を始めたのは二〇二〇年の八月十日です。


 兎にも角にも、設定に拘りました。

 まず『安楽死制度』が制定される背景及び過程を考え、『簡単に死ぬことは許されない制度』として成立するのかを客観的に見ながら何度も練り直しました。

 実際には十五年後、日本がどうなっているのかなど想像はつきません。

 個人的には本作のような『安楽死制度』が制定される可能性は極めて低いものだと思っております。

 倫理的、道徳的、色々と課題はありますよね。

 

『アシスター』という職業も本当に難しいなと、書きながら常々思っていました。

 物語を書くにあたり一番悩んだ点は、死にたい理由と救いになる希望となるものを両側面から考えてそれぞれのストーリーを構成することです。

 と言うことは、アシスターは常日頃これに似た悩みに直面していることになります。死の推奨人でもなければ、生の推奨人とも言い難い。

 真の意味で寄り添うこと。

 眞白も私も、どうすれば安楽死希望者の心の奥底にある『生きたい』を聴けるのか、悩み続けました。


 筆を執りながら常に頭の中にあった一つの信条。

 それは『人生って常に幸せなんてない』ということ。

 誰しも暗くて触れてほしくない部分があると思っています。

 少なくとも私はそうです。本当に辛かった時、死を望んだこともあります。


 本作では強制的な面談で眞白が人命幇助者アシスターとしてそこに触れていきますが、現実では簡単に出来ません。気付けずに大事な人を失ってしまうこともあります。

 読んでいただいた方の中にも、もしかすると生きることが辛い方がいらっしゃるかもしれません。

 そのような誰かの暗闇に少しでも『眞白の言葉=楪一志の言霊』という光が差し込んでほしい。


 そう祈りながら書き続けました。沢山、何度も祈りました。


 お恥ずかしい話、私は年間三冊ほどしか読書しない上に、まともに書いた物語は本作ともう一作のみです。努力不足、未熟者であり、伝わりにくい箇所や不適切な表現も沢山あったかと思います。今後、沢山の作品に触れて勉強しようと意気込んでおります。


 皆様は、どのエピソードがお好きでしたか? 宜しければ教えていただきく思います。

 私は「ゆびきり」が一番好きです。

 改稿にて加筆している最中、あまりに感情移入してしまい、思わず涙してしまった新たなシーンもあります。

 書籍にあたり改稿作業を五回以上しましたが、どのエピソードもとても良くなりました。

 新章「エピローグ」では短いながらも、眞白や安楽死希望者のその後が描写されていますので、是非書籍も読んでいただければと思います。


 題材が題材なだけに様々なご意見を頂きましたが、散々悩んだと言いながらも書き始めてから断念しようと思ったことは一度も無いですし、これが『本当に書きたい物語』だったと書き終えた今、胸を張って言えるのも事実です。


 筆を置くまでの間、多くの方々から様々なご助言、ご助力をいただきました。


 素敵なレビューを書いてくださった皆様、本当に嬉しく思っております。

 深く御礼申し上げます。

 

 そして皆様、最後まで読んでいただき有難うございました。


 楪 一志

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レゾンデートル 楪 一志 @yuzuriha-isshi

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