象牙の櫛の付喪神

作者 戸谷真子

《梅の花》は願う、あるじの後を追いたしと

  • ★★★ Excellent!!!

東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな

かの菅原道真が詠んだ歌です。
この歌に詠まれた梅の花は大宰府天満宮にあり、現在でも春には美しい花を咲かせています。この梅は通称「飛梅」といわれています。その昔、政争に敗れた菅原道真が京の都から左遷されたとき、道真の邸に植わっていたこの梅の木があるじたる道真を想い、その後を追い掛けて大宰府まで飛んでいったという伝説が残っているからです。

木があるじを想うように、物たる櫛もあるじを想う。
されどもひとの壽命と物の壽命とでは大きな違いがあります。故に《後を追いたい》と願うのです――――

ほんとうに素敵な物語でした。一万文字という字数のなかにこれだけの深い物語を収められた、著者様の筆力に脱帽致しております。
誰かを想うことの暖かさが綴られた美しいこの物語を、是非ともひとりでも多くの読者様に読んでいただきたく存じます。

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