純文学仕掛けのブロマンス

凛としている中にやるせなさが滲む文章。純文学の語り口が美しいです。
自分の命を投げうって主人を救った守り人と、その心臓を機械で動かし、自らの血を与えてまで彼の命を守り抜く主人。
この二人の関係には主従を超えたブロマンス的な愛を感じます。
愛する者を繋ぎ留めたいのは、相手を想う心か、それともエゴか、欺瞞か。
葛藤を見せる前半から、物語は思わぬ方向へ進み、守り人の運命が明かされることになります。機械仕掛けだったものに本当の血が通うとき、この守り人は自分の運命が主人のぬくもりで導かれたものと思うのでしょう。
その運命が苦しみではなく、幸福なものへと感じさせるラストは、こちらまで前向きな気持ちにしてくれます。
短いながらも、何かを守り、生き続けることの意味が詰まった物語です。

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