強欲かもしれない。それでも生きて側にいて欲しい
- ★★★ Excellent!!!
子供を持つ親、愛するパートナー、慕う親をお持ちの方ならよく分かると思う。
愛する人の命が失われるとき、どんな方法でもいい。生きて自分の側にいて欲しいと──。
SFの世界ではあるのだけれど、現実味があります。それが端正な文章と幻想的な世界観と相まり、短いながらもぐいぐい引き込まれます。
ラストは読んだ人それぞれの感じ方があるでしょうが、主人の血が流れる二人の微笑ましい描写に、希望を感じました。命は途絶えることなく、繋がっていく。葉が落ちても、土の養分となり、木に取り込まれ、また新たな葉となる。そのように命と想いは繋がっていく。
大切な人を亡くした朔弥は孤独かもしれませんが、自分の体の中に彼が存在しているというのは、ある意味幸せかも。
愛すること、生きることを考えてみたい。落ち着いた洗練された文章に触れたい。そんな方におすすめです。