罪を知るからこそ、癒したいと願う。

 暗い影を落とす二人に幸あれと願わずにはいられません。

 生まれを疎まれ、使用人のように扱われてきた令嬢エリーゼは、自らの婚約者を戦地に送り、殺したと囁かれるヴォルフリート将軍のもとへ嫁ぐことになります。わかりやすい政略結婚であり、エリーゼもそれをわかっていて向かうのですが、将軍と話をすることで今まで聞いてきた「事実」と異なるものが見えてきます。
 エリーゼもヴォルフリート将軍も、周囲から疎まれてきた存在です。将軍は血も涙もない残酷な人だと言われてきたけれど、それは必ずしもすべて真実とは言えないし、エリーゼのいた世界がいかに狭く、偏った教育を(むしろ洗脳を)施していたかがわかります。意思を抑圧され、隷属することで生きる術を得ていたエリーゼが、将軍のもとに嫁ぎ、自ら見識を広めていくことで、少しずつ自立し意思を持っていく姿を応援したくなります。まだ弱々しくはありますが、二人並んで支え合い、わかちあう間柄になれますようにと祈りながら、物語の行く先を見届けたいと思います。

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