平家。
一度は王城で武士として最大級の栄華を手にしながらも、武人の心を忘れてついには源氏に駆逐された公家もどき。
そうした通俗的なイメージがついて回る歴史の敗者だが、そんな中にも煌めく将星がたしかに存在したことを、多くの人間が知らないだろう。
その代表格こそが、本作の主人公平知盛。
最初はまともな実戦経験のない彼ではあったが、反抗勢力や源氏との戦いで、大将としての才気を開花させていく。
しかし長者清盛の死を皮切りとして、過去の繁栄にしがみつく宗盛ら身内。暴威のまま押し寄せる木曽義仲と、その裏で確固たる地盤を鎌倉に築く源頼朝。そして戦の鬼才、義経の出現。
そうした多くの内憂外患を抱える知盛ら平家最後の名将たちの健闘も虚しく、時代は変革を迎えつつあった……
その栄枯必衰を的確かつ冷酷なまでに描く硬派な王道作ですが、だからこそ最後の最後に投じられる変化球に衝撃を受けること、疑いありません。
遠くにあれば音に聞け、近くに寄らば目にも見よ。
時流に抗い続けた悲劇のヒーロー、その最後の戦いと決断を……
抜群の力量を持ちながら、覇権を握れぬ英雄は案外と多い。平知盛もそうだろう。
もし、清盛没後の平氏の総帥が知盛ならばと多くの人が思う。しかし、時代は長子相続が当たり前の時代。それはあり得ないのだ。平宗盛の器量が低かったのは確かだ。しかし、平氏一族は厳密に言えば、武士ではない。あくまでも貴族だったのである。つまりは古い時代の一族。武士という新しい時代を切り拓いた源氏に敗れ去るのは宗盛のせいでも当然知盛のせいでもない。時代の流れの宿命だったのだと思う。
その平家滅亡までの哀愁を平知盛を中心に、平家のオールスターを登場させ、時に男らしく、時にたおやかに描いたこの作品はいままで読んだ、どんな源平合戦の小説よりもストレートに面白かったです。
わたしは源氏より平氏の方が好きです。
ありがとうございました。
「平知盛」… 誰?
そう思った方にこそ読んでほしい物語です。
かく言う私も、その一人。
平家物語と言えば、必死に暗記した冒頭部分と、「敦盛」「扇の的」の場面くらいしか思い浮かばないっ。そんな状態からのスタートでした。
時代の波に押されるように、栄華を極めたはずの平家は、西へと流されていきます。
そして、平 清盛の四男である知盛は、その波に、懸命に抗います。
平家というと「驕れるものは久しからず…」の言葉のせいか、貴族化し、権力に溺れてたため敗北したという、なよっとしたイメージがあったのですが、そんな事はなかった!
平忠度、平教経といった魅力溢れる武将達の戦い、生き様が胸を打ちます。
もちろん知盛の名将ぶりも見応え充分です。
人物も個性豊か、状況描写も丁寧なので、歴史に疎いが為に置いてけぼりを食ってしまうなんて心配はありません。
安心して読めます。
この機会に、心に染みる平家物語を読んで、世界を広げてみませんか?
本作は、平知盛を主人公に据えた平家の物語です。
源氏に追われる所を描いております。
特に義経は源氏側として有名ですが、平家も負けてはおられません。
知盛は、智将です。
父、清盛の才能を色濃く継いだ名将です。
戦において、その力を発揮できるのは、果たしてかなうのか。
佑音(ゆうね)さんと言う素敵な方も私は好きです。
ハッキリ言って、可愛いです。
特に元気な所もいいのですが、しっとりと思い遣りのある女性としても憧れます。
知盛と乳母子に育ち、仲がいいようですよ。
情景がとても綺麗に描かれております。
それは戦のものでもあり、海の色と幟の紅が重なるように動くのが、素晴らしいと思います。
幾つかの有名な戦を経て、西海へと行きますが、ただ逃げるのではありませんでした。
ある大切なものを取りに来るのを守ろうともしておりました。
知盛と佑音がむかえた海での愛情、深い感動が起こりました。
これは、一つの大河の如き物語だと言えるでしょう。
是非、ご一読ください。
誰もが冒頭を知っているであろう『平家物語』。
その滅んでゆく平家の中で、最後まで雄々しく戦い、平家を支え続けた名将・平知盛。
すみません。正直、こちらの話を拝読するまで、「平知盛」という名前すら知らなかったのですけれど……。
読んだらもう、惚れずにはいられませんっ!
もう、本当に格好いいです!
圧倒的な絶望の中、それでも諦めずに足掻く名将の姿が、胸に迫ります……っ!
知盛だけでなく、散ってゆく平家の武将たちもまた、素敵で……っ!
読みながら、何度、涙に目を潤ませたことでしょう。
平家の武将たちが魅せる滅びの美学に、じっくりとひたってください。
祇園精舎の鐘の声……の美文から始まる物語といえば、言わずと知れた平家物語。
この『紅の知将、西海を征く』はまさにその平家物語の時代を背景に、同じく祇園精舎の鐘の声の名文から開始されます。
時は平安末期。
治承四年十二月に起こった、いわゆる南都焼討から始まります。
主人公の名は平知盛。
かの平清盛の四男にあたる人物で、事実上の平家方の総大将として源氏と戦い、壇ノ浦にて散った名将です。
内容が軍記物であり史実に即して物語が推移し、そして視点が平家方である以上、戦勝の爽快感を得ることは難しいといえるでしょう。
徐々に追い込まれ、西へ西へと追われていく。
そのいかにも平安然としたもののあわれを感じるには、知盛視点であることは不可欠です。
そしてそこが、物語に引き込まれる要因となっています。
内容はシリアスですが、随所にコメディタッチな掛け合いが盛り込まれ、逆に人間臭さを見せてもくれており、登場人物に共感し易く、読み易い内容となっています。
平家物語を御存じない方も、これを読めば、その雰囲気を十二分に掴むことができるでしょう。
歴史物ではやはり戦国時代が根強い人気がありますが、この治承・寿永の乱のあった平安末期も、十分に魅せてくれます。
お奨めです!