平知盛を描いた平家物語

 祇園精舎の鐘の声……の美文から始まる物語といえば、言わずと知れた平家物語。

 この『紅の知将、西海を征く』はまさにその平家物語の時代を背景に、同じく祇園精舎の鐘の声の名文から開始されます。

 時は平安末期。
 治承四年十二月に起こった、いわゆる南都焼討から始まります。

 主人公の名は平知盛。
 かの平清盛の四男にあたる人物で、事実上の平家方の総大将として源氏と戦い、壇ノ浦にて散った名将です。

 内容が軍記物であり史実に即して物語が推移し、そして視点が平家方である以上、戦勝の爽快感を得ることは難しいといえるでしょう。

 徐々に追い込まれ、西へ西へと追われていく。

 そのいかにも平安然としたもののあわれを感じるには、知盛視点であることは不可欠です。
 そしてそこが、物語に引き込まれる要因となっています。

 内容はシリアスですが、随所にコメディタッチな掛け合いが盛り込まれ、逆に人間臭さを見せてもくれており、登場人物に共感し易く、読み易い内容となっています。

 平家物語を御存じない方も、これを読めば、その雰囲気を十二分に掴むことができるでしょう。

 歴史物ではやはり戦国時代が根強い人気がありますが、この治承・寿永の乱のあった平安末期も、十分に魅せてくれます。

 お奨めです!

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