必読小説!読了後に心が温かくなる素晴らしい作品です

全52話完結、文字数にして約14万文字、やや分厚い文庫本1冊程度でしょうか。
本作は、残酷さの中に優しさが満ちた、本当に素敵な小説です。

異形という存在と、人との関わりを描きつつ、なぜ人は異形を恐れるのか、そして殺すのか。負の部分を突き付けてくるのですが、ダークな部分がないのですね。

善悪は、どちらか一方通行で見るべきではなく、双方向で見るべきものです。
そして、結果的に、異形はなぜ生まれ、人と敵対するのか?

物語は、研究員の陸奥という青年と、不思議な少女アサヒを中心に描かれていきます。当初の冷めきったアサヒの態度が実に素晴らしく、おろおろする陸奥が何とも可哀相に思えるほどです。

そこに様々な異形が絡み、陸奥は知らなかった真実を少しずつ学んでいきます。その過程で、アサヒとの距離も縮まっていきます。

異形の真の姿を知った陸奥の行動が、アサヒをも動かしていきます。
アサヒがなぜ、あのような恰好でいるのかは、物語のかなり後半で解き明かされますが、そこは読むのがちょっと辛かったほどです。

ラスト52話のエピローグは、涙する人も多いのではないでしょうか。

余談ですが、個人的には前半に登場した妖精のエルが、後半ほぼ出番なしなのが悲しかったです(笑)

本作、本当に読むべき作品ですし、読まなければ損ですよ。
読了した時に、心が温かくなれる貴重な作品です。
是非とも一読してください。

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