ひまわりの花に会いに行く
花音
プロローグ
はじまりはじまり
「ねぇ、お話読んで!」
「早く早く!」
「慌てないでください、ほら座って」
二人の少女が楽しそうにはしゃぎながら、女性の周りをクルクル回る。彼女が窘めると、少女たちは大人しく隣に座った。
「これはむかし、むかしのお話です」
女性は少女たちに微笑みかけ、手にしている本を開く。そして、綴られた言葉たちを優しく声に載せて紡いだ。
***
むかしむかし、人々が村や町を作って賑やかに暮らす中、ひっそりと静かに目を覚ました物がある。
その存在は50メートルを超える体躯、6本の足、無数に伸びる手、強靭な牙と翼、金属を引っ掻いたような音の咆哮。それが人々を恐怖のどん底へと突き落とすのは、一瞬だった。
最初に現れたものを皮切りに、それは世界のあらゆる場所に出現した。空を飛ぶもの、地を駈けるもの、海や山に住まうもの……姿形はそれぞれ異なれど、人を襲い、その肉を喰らう。
彼らの力は強大で、縦横無尽に暴れまわり、あっという間に世界を蹂躙した。
人間は彼らに『異形』と名を付け、恐れ忌み嫌い、残された僅かな土地で日々を怯えながら過ごしていた。
***
「わぁ! 怖い!」
「怖い怖い! 食べられちゃう!」
二人の少女はギュッと女性にしがみつく。幼い少女たちには刺激が強すぎたらしい。怯える二人を安心させるように、一層優しい声を紡ぎながら、女性は二人の頭を撫でた。
「大丈夫ですよ。これはずっと、ずっと昔のお話ですから」
「ほんとぅ?」
「食べられない?」
「はい、食べられません。安心してください」
女性はしがみついてくる少女たちに優しく微笑みかける。彼女のその言動で少女たちは落ち着きを取り戻したようだ。しっかりと座りなおすと、話の続きをせがむ。
「続きは!」
「どうなるの!」
「長い間怯え続けていた人間たちですが、やがて異形の弱点を見つけました。それは拳銃です。異形は撃たれるとそこから腐り始めてしまいます」
「拳銃!」
「バンッ!」
「そうです、バンッです。そして人間はどんどん異形を撃ち、異形に奪われていた世界の半分を取り返したのです」
バンバンと手を拳銃の形にして、撃つ真似をする少女たち。随分興奮しているようで、立ち上がって遊び始めてしまった。
「こらこら、まだお話は終わってませんよ。座ってください」
「「はーい!」」
女性の声を聞き、少女たちはまた大人しく座った。それを確認すると女性は物語の続きを語っていく。
「コホン……これはそんなほんの少し平和になった世界でのお話。少し変わった青年
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