作者様が描かれるのは「少し不思議」なSFの世界なのですが、なんだかリアルで、思わず「あるある」と頷いてしまいます。いや、「ないない」のはずなんですが……「そうそう、そういうことあるんですよね」と納得してしまうような、ちょっとリアルな世界観が繰り広げられているのです。作者様はショートショートの作品をたくさん書かれているので、次から次へと読みたくなります。どれも逸品です。
透明人間、ミシュラン、冬虫夏草、フライデー……蓋を開けると出てくる「サラリーマン・パンドラ」が怪しくもおかしい……。世界を男たちが奇妙に駆け回り、飛び回り、普通に生活を送る。塩塚不二夫さんの自選集ということで、作者にとってもマイベストなのでしょうが、私のヨムヨム本棚、シュール部門でも堂々1位でございますので、「シュールな男たち辞典」が並んだことをうれしく思います。ここが入口であり、世界は無限に夢幻に広がっているのです。扉を開ける勇気を持ってください、きっと誰も後悔はしません。
独創性がハンパなくて、おもしろかった!140字で、これは、すごい!
一つ一つのエピソードが、普通なら10倍くらいの長さの短編にしたくなる面白さ!そうしないクールさが憎らしい。形而上学的な危うさより、可笑しみを利かせたナンセンスな不条理です。タイトルや本文の随所に、作者のセンスが光ります。論理と非論理の小ファンタジー集。
作品には大きな意味と深みを求めるものだと思っていましたが、「それがなくても面白いんだ!」と目が覚めたようでした。でも、意味のない文章をただ思いつくまま連ねただけでは、面白いかどうかは博打になります。人を惹きつけるシュールさというものをお持ちの方だと思います。
あまりにシュールすぎて、わからない作品もありましたが、キラリと光る作品もあり楽しめました。
シュールと言ってしまえば確かに簡単なのですが、もっとこう、それだけでは表現しきれない奥深い味わいがある作品達です。ただの無作為な出鱈目では無くて、一定の説得力を伴った「小気味好い不条理」とでも言えばいいのでしょうか。個人的に特に好きなのは『サヨナラ・ピカソ』『哲学的迷子』それから『幻ミシュラン』ですね。
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