マイハリー2061

その男はハリー彗星に恋をしていた。
だが、恋情とは反比例して体は衰え、今ではベッドの上で横たえながら、愛しき星をまぶたの裏に想い描くことしかままならない。
そこへ届いた兄の声。「これから会いに行こう」と提案する兄の声に、男はもちろん無理だと応じた。
すると兄はこう告げた。今のお前なら誰よりも身軽な旅人になれる、と――。
さながら魔法をかけられたかのように男の体が起き上がる。不思議なことに、兄の声に触発される形で男は体の自由を取り戻したのだ。
かくして男は古びた木枠のガラス窓を開け、旅立った。全天一の美しき箒星、ハリーへと会うために――。