第2話

 しん、しん、僕はしばを踏む。

 つゆれてはいたものの、だしを苦にする冷たさはなく、足取りはとても軽やかだった。

 なんだかオーストラリアに向かおうとしていた、かつての兄さんと一緒だね。

 ――そうだ。ハリーの観測に出かけた兄さんがかばんに入れていた、あの望遠鏡。僕もこれからハリーと会うんだから必要かもしれない。

『場所と日時さえよければ肉眼でも見られるぞ?』

 そんな機会にめぐまれるとも限らないよ。

『まあ……限らないな』

 よし兄さん、僕はこれから望遠鏡を作ってみるよ。

『今から? って、急に走ると危ないぞー』

 ちょうど向こうに竹林があるし、竹を使った望遠鏡なんていうのも面白そう。

 そんな期待をふくらませ。

 ずん、ずん、僕は歩を進めた。

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