常に空色が見えています

 誰もいない謎の街、空に浮かぶ建物、そこにやって来た主人公の少女…と、ファンタジーが持つ意味の内、不思議をとても色濃く感じられる物語です。

 読み進める内に謎が深まり、そして集束していく展開は皆の気持ちを引っ張ることでしょうが、私は別のものが見えていました。

 空の色なのです。

 一人称で綴られた物語ですが、何故かいつも登場人物を足下から見上げ、空をバックにしているような、そんな感覚に陥ります。

 登場人物の声が身近に聞こえ、とても近い距離で見ているように感じつつも、全てを俯瞰しているものがある気がしました。

 青空だったり、宵だったり、夜だったりする空の存在が見えてきます。何もしてくれないし、いつも代わらないくて。

 それは少し不思議な感覚で、この物語のファンタジー色を強くしてくれている…というような事が浮かびました。

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