誰もいない謎の街、空に浮かぶ建物、そこにやって来た主人公の少女…と、ファンタジーが持つ意味の内、不思議をとても色濃く感じられる物語です。
読み進める内に謎が深まり、そして集束していく展開は皆の気持ちを引っ張ることでしょうが、私は別のものが見えていました。
空の色なのです。
一人称で綴られた物語ですが、何故かいつも登場人物を足下から見上げ、空をバックにしているような、そんな感覚に陥ります。
登場人物の声が身近に聞こえ、とても近い距離で見ているように感じつつも、全てを俯瞰しているものがある気がしました。
青空だったり、宵だったり、夜だったりする空の存在が見えてきます。何もしてくれないし、いつも代わらないくて。
それは少し不思議な感覚で、この物語のファンタジー色を強くしてくれている…というような事が浮かびました。
高校一年生の鳴海はある日、天空に浮く島々の中に迷い込む。両親や友達との記憶も失われ、アテがないながらも出口を探して彷徨う。
ファンタジックで絵本に出てきそうな舞台を、鳴海は満喫しながらも長い時間をかけて――独りで巡っていく。葛藤を繰り返すうちに心境や周りの状況にも変化が起きはじめ、やがて真実を知ることになり――
この物語で起きるドラマの数々は、読者の皆様自身の目で追ってみるといい。
解きたい謎があるならページを捲ればいい。
足を前へ動かしてみればいい。
そこで壁にぶち当たったなら、その時自分がどうしたいか決めればいい。
自分を信じればいい。
そんな前向きな物語という印象だった。ぜひ最後まで読んでほしい一作。
もう、ひとこと紹介に書いたとおり。
だれも居ない世界、空に浮かんだ街でそこから脱出しようと彷徨う少女の話。
現代的な構造物・世界には違いないのだけれど、そこに暮らす少女の息づかいが伝わってきそうな文章力はまさに圧巻。不思議な世界とそこでの生活というのを、ここまで生々しく描けるものなのかとちょっとびっくりしました。
ちょっとこれは余人をもってして替えがたいセンスであり、現代ファンタジー作品の中でも飛び抜けているのじゃないかと感じます。(あまり僕も多く読んではいませんが)
この文章に浸るだけでも読む価値があるのではないでしょうか。
最終的に少女は世界の謎にたどり着き、元の世界に戻るための試練に立ち向かっていくことになるのですが、せつなさと希望に満ちたラストもまた素晴らしい。
とても素晴らしい作品でした。おすすめです。
主人公の女子高生、鳴海は目が覚めると空に浮く島の上に建つマンションにいました。
鳴海は戸惑いつつも、この不思議な世界での生活を満喫するのですが、このままで良いのかと悩みはじめ、そして……
当初、鳴海は独りで過ごすことになります。
ですが、話が進むうちに新たな登場人物たちが現れます。
そして彼らとの関わりの中で、鳴海は自分の気持ちと向き合い、精神的な成長をしていく姿が印象的でした。
話が進むにつれて謎が深まり、ハラハラさせられる展開もあって、どんどんお話の加速度が上がっていきます!
恋、サスペンス、思春期の悩み、たった一人から始まった物語とは思えない色々な感情を呼び起こしてくれる作品でした☆
いつのまにか誰もいない、けれど何でもあるという不思議な世界にいた女の子。
あちこちにいろんな島が浮かび、おまけにぴょんとぴょんと飛んで行き来できる……ときたら、一人きりのスローライフをエンジョイしてしまいますよね。
しかしそれが数日、数週間、数ヶ月と続けばどうでしょう?
人は一人でも生きられる。
けれど『生きられる』のと『生きる』のとでは、意味は異なります。
誰かに名前を呼んでもらえなければ、誰かに存在を認識してもらわなければ、自分でも『自分とは何か』を見失ってしまうのです。
主人公・鳴海が過ごすことになったこの何でもある『自由』の象徴のような世界には、とんでもない秘密が隠されています。
それを知った彼女の目に映るのは、やはり青い空。
痛みから無、無から再び痛みへ。
鳴海は『自分』と向き合い、俯いて泣いて戦って、そしてほんの少しの強さを得て、上を見上げて歩いていきます。
皆様も空を見上げ、移りゆく景色に自分がここに生きているという当たり前のことを改めて噛み締めてみましょう。擦れて傷付いた胸に、空の眩しさがちょっとしみるかもしれませんが、それも生きてこそなのですから。
目覚めた少女がいたのは天空マンション。
誰もいないそこで出会う少年、そしてゆっくり真実の扉が開かれていく……。
徹底的な孤独が描かれた序盤で、本当にこの世界で誰にも会えないのかと不安になります。
しかし鈴木という男子に出会い、彼との生活に慣れていくけれど、この世界への謎は抱き続けていて。。
そして真実に辿り着いたとき、自分との闘いが始まる。
ここがものすごく怖い。サスペンスであり強烈なホラーです。
完結まで拝読し、こうして物語を思い起こしてみても、起承転結がハッキリしていて構造美を感じる作品ですし、ひとりの不幸な少女がそれでも生きていこうとする姿に心が強く打たれます。
この物語に出会えてよかったです。
素晴らしい作品をありがとうございました!
気がついた時には、空を飛ぶマンションにいた主人公、鳴海。
えっ、なんのことだかわからない? それは仕方ありません。鳴海もまた、同じような気持ちだったのですから。
わかっているのは、どういうわけか空を飛ぶマンションがあって、なぜか自分がそこにいるという事実。説明してくれる人どころか、彼女以外の人間は、一人としていないのです。
こんな訳のわからないところに一人なんて大丈夫? ですがこの世界、食べ物やライフラインは揃っていて、暮らそうと思えばいくらでも暮らせるという、非常に都合のいい世界。よけいに訳がわからなくなりますが、元の世界に戻る手立てがない以上、ここで生活していくしかありません。
生きていくだけなら不都合はないけど、どこか奇妙なこの世界。果たして脱出はできるのか。そもそもなぜこんな世界が存在しているのか。
見知らぬところで一人生きていく鳴海は、その先に何を見つけるのでしょう? そしてこの世界の真実を知った時、どんな選択をするのでしょう?
主人公はごく普通の、高校生の女の子……のはずでした。
しかしある日気がついたら、彼女がいたのはとある見知らぬアパート。もしかして、誘拐された? しかしよくよく調べてみると、不可解な事が。
なんと彼女のいるアパートは、空に浮かぶ島の上に建っていたのです。
これは現実? それとも、夢を見ているの?
状況を確認しようにも、何故か自分以外の人の姿はなく。
訳のわからぬまま天空マンションに一人佇む女の子の、サバイバルが始まります。
……と、ここまでが序盤のストーリー。
物語は中盤、そして後半に進むにつれて、話の雰囲気がガラリと変わってきます。
ネタバレになるといけないので多くは語れませんけど、きっと驚くはずです。
目が覚めたら空にいた。
冒頭いきなりの爽やかファンタジー。うわあっと憧れるような素敵な世界が広がっています。読んでいてワクワクします。
しかも、この世界、身体能力があがっていて、身軽にあちこち空島の上を渡って行けるのです。さらにさらに漫画やゲーム、あらゆる食べ物も洋服も自由に使うことができて……子供の頃、誰しもが一度はこんな生活を思い描いたことがあるのではないでしょうか、そんな素敵な世界に主人公はやって来たのです。
が。果たして、ここは本当に楽しいだけの世界なのか。
じわじわと不安が忍び寄ってきます。謎が増えていきます。
そして……
ものすごく魅力的で爽快感がある中で、ひっそりとした不安が付きまとう、絶妙な世界観で展開します。
主人公はこのあとどうなっていくのか、ハラハラしながら、ときに笑い、憧れ、そしてやっぱり不安になって、を繰り返していき、その先にたどり着く答えは……? 主人公といっしょに、この世界の謎が解けるのか、それとも……
予想がつかない展開が魅力の作品、おすすめです。
最初に読んだとき興奮で背筋の震えが止まりませんでした。
誰も居ない天空の浮島。そこに建つマンションには「住んでいた気配」こそあるが住人の姿はない。青空を見渡せば、いくつもの島が浮かんでいてどこにでも好きなように冒険することができる。
目覚めた途端、天空島に隔離されていた私は、島から島へと渡り元の世界に帰る手段を見つけ出す事が出来るのでしょうか?
なにこれ「まるで私向けに書かれているようだ」などと図々しくも思ってしまいましたよ!
漂流生活を強制されているのに「好き放題な王様生活」をノンビリ堪能してしまう主人公のキャラクター、丁寧に切り抜かれた街角の美しい風景描写。
そして、緩やかに忍び寄ってくるサバイバル生活の真の敵。
作中の仕掛けのどれもが計算されつくしており、たった一人の登場人物に読者が深く共感できるよう独創的な世界が構築されています。
私のように「自由な生活いいな~」と安易に考える人ほど、この物語は刺さるのではないでしょうか?
日常の有難みを忘れてしまった貴方へ、おススメです!